最近、かなり寄せられるメルマガの質問の1ジャンルに、「いわゆるマジョリティにネットからアピールするにはどうしたらよいか」というものが一定量であります。先日は広告代理店勤務の方から、「ネットをどうすればいいのかわからない」というのが来ましたし、どう考えてもレイトマジョリティ向きの商品をネットで売りたいという相談もけっこうあります。
とりあえず変なこと書かないようにこれで勉強しました。もともとこうした考え方は「ハイテク用品の顧客」についての理論でした。でも、総務省の平成23年度調査では日本のネット人口は79.1%で9,610万人。ネット接続するためには必ずハイテク用品の顧客にならないといけないから日本人の大半に当てはまることになる・・。その前提で書きましたけど、わたしは経済学者ではないので、そこ周辺に突っ込まないでくださいな。
これらの専門用語ですが・・・
このITメディアの記事がわかりやすい。
普及学の基礎理論として知られるエベレット・M・ロジャーズ(Everett M. Rogers)のモデルでは、顧客は「イノベーター」「アーリーアダプター」「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」「ラガード」の5つの採用者タイプに区分される。この理論ではイノベーターとアーリーアダプターを合わせた層に普及した段階(普及率16%超)で、新技術や新流行は急激に拡がっていくとしている。そこで、イノベーターとアーリーアダプターにアピールすることが新製品普及のポイントであるとされてきた。
こちらがその図。故エベレット・M・ロジャーズ(Everett M. Rogers)はイノベーターとアーリーアダプターを合わせて16%としているが、彼がこの理論を確立したのは60年以上前の1962年でネットなんて無い。ハイテク用品の顧客自体が選ばれた人たちだった。このあとのキャズム理論も1991年にムーアっていう人が提唱したわけで、そもそもネットがほとんど普及してなかった時代です。現在とは大きく異なる。テレビと新聞しかなかった時代は誰もが同じ物を読んでいたが、「ネットに親しむ」にはそれなりのITリテラシーの高さが必要となってくるからだ。
少なくとも現在ではイノベーターとアーリーアダプターを合わせて16%なんて絶対にいない。この中でアーリーアダプター以上と言えるのは、まったくもって自分の体感値のみですが、約10万人、0.1%程度ではないかと思われます。この仮説についてはあとで数値の根拠を述べます。アーリーアダプターと、アーリーマジョリティの間には「キャズム」と呼ばれる大きな溝があるとされています。ええ、あります。とんでもなく深い溝です。日本海溝なみです。しかし現在では、アーリーマジョリティとレイトマジョリティの間にもっと大きなキャズムがあると思います。
わかりやすくネット用語変換もつけると、こんな感じでは無いかと思います。調査データではなくてあくまで体験値。
★イノベーター(インフルエンサー)★ 数百人〜1000人程度
★アーリーアダプター★ 10万人未満ということは0.3%??
※積極的にネットで情報を収集する
※ソーシャルを非常に積極的に運用する
<<<< キャズムと呼ばれる深い溝 >>>
★アーリーマジョリティ★
※ネットで買い物したり調べ物はするが、情報収集はあまり行わない。
※ソーシャルは比較的好き
※Yahoo!は見る
<<<< さらに深いキャズム >>>
★レイトマジョリティ★
※ネットで買い物は、たまにモールで。必要なときのみアクセス
※ソーシャルはLINEなど身内のみでやっている → バカッター存在域
※テレビはよく見るけど、年齢が高い層は新聞も読む
※芸能人のブログとかは見るし、モバイルゲームはする
※マイルドヤンキー、主婦、若い女性に多い感じ
★ラガード★
※ガラケーで一応天気予報とかは見ている感じ?
※ほぼテレビのみ
という感じではないでしょうか。
キャズム(溝)を感じる時
ネットではわたしはそこそこ知られていると思いますが、前にも書いたのですが、200万PV月を超えても道で声かけられたり一切ありません。六本木歩いていても、渋谷歩いていても同じです。まるで無名です。Yahoo!個人で炎上しても恐ろしいほどに普通の人は誰も知りません。アルファブロガーだのなんだの言われても、1日のアクセス人数が5万を超えることは稀です。普通の一般人です。
自分のブログがめちゃくちゃに回ったとき、2014年2月21日のことですが、1日に33万3000人のユニークユーザーがこのブログを見ました。エントリーは森総理の発言についてなんですが、これがいままでの記録です。
このときのソーシャルボタンがこちらでして、ソーシャルで回るとしたらほぼこれが限界では無いかと思います。30万人のうち84.2%が新規訪問です。1回でもこのブログを見たことのある人はこんな日でも5万人に満たない。仮にアーリーアダプターの半数が1回はこのブログを見たことがあると仮定しても、10万人しかいないわけですね。
マジョリティがもっともアクセスするニュースサイトは間違いなくYahoo!ですが、Yahoo!個人に投稿していて何度かトップニュースになりました。こういうときは1日で150万PV以上が発生します。こうなるとアクセスの主体はマジョリティの皆さん。全文読まずにコメントしたり、明らかに趣旨とは違う反応だったり、的外れの批判が爆増します。明らかに慣れていない。しかしそれでも日本のネット接続人数のたった1.5%にしか過ぎないんです。残りの98.5%がレイトマジョリティとラガードになるのではないかと思います。
わたしがネットでLUSHとパタゴニアがシーシェパードのスポンサーで、さらに気仙沼をターゲットにしている団体に金を出していると書いてネットで回ったところで、彼らの売り上げはほとんど変わらないと思うのです。毎日新聞が書くほうがよほど打撃なので神経質に反応するわけですね。
つまり、経験からの勝手な推測ですが・・・
イノベーターとアーリーアダプター 約10万人 0.1%
※かなり詳細にジャンルが広がるのでこれくらいはいるでしょう
ここにキャズムがあり・・
アーリーマジョリティ 約150万人 1.5%
ここにさらに深い、どうしようもないくらいのキャズムがあり・・
レイトマジョリティとラガード 9500万人
が、いまの日本の現状では無いかと思うわけです。
アーリーアダプターからマジョリティに浸透するか
よく、ネットのクチコミはアーリーアダプターから広まり、大衆(マジョリティ)に広がるという人がいます。はっきりいいますが、ネットだけではその効果は期待できないはず。キャズムが深すぎるからです。
通常、レイトマジョリティにまで認知が広がるとすると、
1 ネットで広く浸透する
2 ネットのメディアが取り上げる
3 テレビや新聞の記者が発見する
4 テレビや新聞に出る
という段階を経て、4ではじめてレイトマジョリティに到達します。わたしが3年やっていて、4まで行ったのは数回だけです。それだけ稀と言うこと。ネットのみで日本人の大多数を占めるレイトマジョリティまで浸透するのは、ほぼ不可能でしょう。ここにテレビや新聞、雑誌などのマスメディアの価値があるし、こうしたメディアはまだしばらくは死に絶えることはないと確信します。
何回も書いているけど、レイトマジョリティに対して知名度を上げるなら、ネットでは全くだめ。テレビに出たり、雑誌に出たりしないと無名のままです。ネットではアーリーアダプターまでは浸透しても、キャズムがあるためレイトマジョリティには浸透しません。「ネットで有名」なのはあくまでも「ネットの中だけの話」であって、最大でも150万人ということだと思います。わたしなんかの知名度は10万人〜とかそんなものです。普通の人は誰も知りません。
ネットのみで浸透させることが可能な商品やサービス
ということは、マジョリティ向けの商品やサービスは、ぶっちゃけネットだけでは浸透力が非常に弱いと言うことです。たとえばスマホやPC関連のサービスや商品は、ネットのみで簡単に浸透しますし、「note」というサービスはすでにアーリーアダプターでは知らない人はいないと思いますが、レイトマジョリティで知っている人は稀だと思います。レイトマジョリティ向けの商品やサービス、たとえば「女性用の安価なアパレル」「食品」みたいなものは、ネットだけで認知を上げるのは相当に限界があり、販売するとしてもレイトマジョリティをすでに囲い込んでいる楽天のようなモールがメインになります。単独のサイトを立ち上げても、「キャズムを乗り越えて」レイトマジョリティを連れてくるのは大変なんです。楽天にいくら搾取されようがしかたがない。近年でこの傾向は非常に顕著になっています。
ネットだけで浸透させたいなら、最初からアーリーアダプターとアーリーマジョリティのみに向けてのサービスや、商品で考えた方が良い。でないと全く広がらない。認知を上げるためにはマス広告を打つしかなくなってくる。
グノシーがアーリーマジョリティとレイトマジョリティの一部を取り込むために増資して、10億円かけてテレビCFを打ったのはここに目的があるわけです。
珍しく長々と大学の講義みたいなのを書きましたが、このエントリーに反応するのはアーリーアダプターまでで、マジョリティの方は「興味も何も無い」っていう感じだと確信しております。自分がどの層なのか、よくわかるかもです。www
いずれ専門の経済学者の方が理論を確立されるとは思いますが、その前に「自分が言い出しっぺ」ということで書いておきますよ。