大ヒットするマンガをマーケティング的に見てみると・・

2014年4月24日

いよいよ本日の夕方くらいにKindleでメルマガまとめ本が発売になります。タイトルは

「聞くは一時の恥 永江一石のなんでも質問 なんでも回答メルマガセレクト 2012-2013」

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この画像を見たらすかさずポチ!!できれば感想をTwitterとかでいただけると幸いです。
価格は300円。昨日のメルマガで「聞く」を「菊」と間違えて配信してしまった。爆!!!

さてその昔、ダヴィンチっていう雑誌で「マンガの世代の移り変わり」について書いたことがございました。マンガ論といえば夏目漱石のお孫さんの夏目房之介氏がレジェンドですが、わたくしはこれにマーケティング見地を入れて「これからヒットする漫画」について適当に語りたいと思います。ただし本流のマーケティングなのでコミケとかオタク系についてはよく知りません。

マンガの世界はあまりに広くて深いため、「そーじゃ無いだろ」とつっこみたい方も大勢いらっしゃると思いますが、あくまでもこちらはミクロでは無くて、マクロ的見地の話でございますのでそこんとこよろしく。つまり細部まで話が及んで「それは違う」と言われても細部が何千万もあるので網羅しきれない。全般的な視点でお願いします。

よく言われることに

マンガは時代を反映する

ということがあります。当たり前と言えば当たり前ですが、「なんで時代を反映するのか」といえば、そこには紛れもない「顧客視点」、つまりお金を払ってお買い上げいただく読者のニーズというものがあります。簡単にいうと時代によってこんな感じで主人公に自らを投影するマーケットが変わってきています。

高度成長期の光と影

「三丁目の夕日」の高度成長期ではまぎれもない光と影がありました。光というのはすなわち、「これからの世界は科学が進んでどんどん凄くなる」というもの。陰というのはその成長について行けずもがき苦しみながらも頑張って生きていく的なヤツ。陰にいる人でも「おれもやったるぜ」にさせる内容が大ヒットしました。

光の代表はもちろんこれ。鉄腕アトム。鉄人28号とかエイトマンみたいな正義ロボット系です。


1951年スタート。1963年にモノクロでテレビアニメになりました。手塚先生マジ天才。自分、全巻持ってましたけども。

でもって陰部分の代表がこれですね。あしたのジョー

Kindle版も出てます。もうめっちゃ暗い。差別用語満載。今の子供は「ドヤ顔」は知ってても「ドヤ街」は知らない。生活保護受けて外車に乗ってる人もいるもんね・・・この少しあとスポ根というジャンルが出てきました。「巨人の星」も高度成長期で、ド貧乏からはいあがるパターン。ブラック系親父。

巨人の星は1966年スタート。星飛雄馬は長屋に住んでいた。子供ながらに「とーちゃん、貧乏なのにちゃぶ台ひっくり返しすぎ!!」と思って見てた。主人公が貧乏だけど頑張るっていう設定はほかにもけっこうあった。「成り上がり」最高。このあたり書いてるとマジで一冊の本になるのであとは駆け足です。

1990年代はいじめが社会問題化

1989年にスタート。大ヒットのこちら

いじめられっ子だった主人公は実家が釣り船屋で、実は家の手伝いをしていたので下半身が異常に強くてボクシングやって大成する。いじめられっ子もコレを見て「俺だってなにか負けないものがあるんじゃないか」と妄想できた。
馬鹿で取り柄もない少年が可愛いラムちゃんにスキスキと言われたりのもパターン的には実は同じである。

つまり漫画という物は、時代の「夢の実現化」という要素で大ヒットする。いまの生活に不満や失望があり、それを「漫画内で」解消するのである。テレビドラマでも同じで「半沢直樹」があれだけヒットしたのは、日々の仕事の中で大なり小なり理不尽な現実にぶつかって、大半はそれを飲み込んで生きていく。でも半沢直樹は立ち向かって敵を倒すわけでそこに痺れるわけです。

ちょっと不安な、いまの大ヒット漫画事情

そう考えていまの漫画を見ると、ちょっと不安になる。

どちらも現実世界ではない。設定自体が架空世界。

今の子供って(大人もそうだけど)、このまま行っても世界はもっと良くなるとは思ってない。世界征服をもくろむ悪の結社がいるとも思ってない。世界征服したら貧困の国とか治安の悪い国とか、財政状況が破綻している国とかみんな面倒見なくちゃいけない。大変なだけだ。世界には夢ばかりではなくて、嫌な物や厳しい現実があることも知られてしまった。アメリカは夢の国じゃなくてスラム街もあるしデトロイトなんて廃墟だ。

宇宙探検するには物凄いコストがかかるから、今の世界の経済ではスタートレックなんか無理でしょう。原発の代替エネルギーでさえなかなか見つからないのに、ワープ航法を生み出す膨大なエネルギーなんかどこにあるのか。ワープするエネルギーがあるなら原発廃止するのに使うわ、マジで、みたいな。

要するに今の時代は・・・

夢も希望もない

のである。身も蓋もないのである。漫画も現実世界にしてしまうと「訳ないし」で終わってしまう。架空の世界のほうが制限無く描ける。書いてきてどんどん暗くなるが、今の時代、草食系の若者が多いのも頷ける。頑張っても先は見えているし、海外に行っても楽しいことばかりじゃないから家にこもる。金を稼がなくたって生活保護で死なない程度には食えるし、クルマがなくても電車がある・・・。大きな不満もないけど大きな希望もない。

基本的に漫画が「現実の不満を解消する」ものであるならば、これからの漫画はどうなっていくんだろう。漫画に限らず映画もドラマも、「想定ターゲットの不満を物語り上で発散させる」というコンセプトで最初から原作を選定して設計すると、ヒットしやすくなると思うんだけどなぁ〜

さて、あなたの不満は何でしょう。
それを解消するストーリーの原作書いて出版社に持ちこめば、あたるかもしれませんよ

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