毎週水曜日のメルマガに質問いただきました。「名古屋グランパスのWEBマーケティング担当者採用について書かれたブログに突っ込んで下さい」というものでしたが、わたくし基本的に人様の書かれたブログについてはアレコレ言いません。それぞれの立場もあるはずですので、名古屋グランパス本体の採用について私バージョンで突っ込んでみたいと思います。
まずわたしのサッカー情熱度ですが、味スタから徒歩圏内に住んでいるのに試合を見に行ったのは2回のみ、1回なんぞはもらった券でヴェルディ(当時はまだJ1で味スタがホーム)とレッズの試合を見に行き、ホームなのにヴェルディの選手紹介でブーイングが起こるのに笑ってしまい、一緒にブーイングした程度です。日本代表戦とかワールドカップはテレビで見ますが、地元のFC東京の選手はひとりとて知りません。今サイト見たら平山相太と森重がいました。びっくり。
そんなサッカーの知識レベルなので、名古屋グランパスの強化とかウンチクを語れるはずもなく、単純に「資本金4億程度の名前は売れてる企業のWEBマーケティング担当者の採用」ということで書こうと思います。まずこれが募集要項なのです。Similar Webで見たらサイト全体のアクセスがこのブログの1/13・・。しかも階層が非常に深い。
まずこれを見て思うに、「誰がこんなの考えたんだろうな」ってことです。いえ、悪い意味です。細かいツッコミどころでまずは「スキルにExcelとかWordって最初に書くものなの??」っていうのはありますが(板前の募集で魚がおろせることって書くようなものでしょ)、それさえできない人の応募があるんでしょうね。わかります。しかしこんな事書くと逆にそんなレベルで応募していいのと見えるので書かない方がいいですよ。
この募集要項を見ると、求めている人材は
(1)WEBマーケティングの経験が豊富(実務経験5年以上!!)
※制作経験ではなくてマーケッターを求めている。つまり外注するための担当者が欲しいのか・・
(2)CRM(顧客を管理して運用すること)にも詳しい
ということになります。(1)は中堅のWEB制作会社に勤務していれば下手したら役員クラスです。少なくとも上位マネージャーでしょう。
(2)はWEB制作系では経験値はほとんど積めないす。クレジットカードやソシャゲや金融系の中枢にいないといけないので、この両方を1人に求めるのは難しいと思われます。
で、(1)の人の応募はあるのかというと、「グランパス命でグランパスと心中しても良い」くらいの人で無い限り、応募は厳しいのではないかと思われるのです。理由は2つあって
(1)収入減
(2)そこでキャリアが終わる
っていうことです。収入についてはグランパス側が求めてる「5年以上でWEBマーケティター歴」というのは、上記にも書きましたが中堅制作会社クラスなら上位マネージャーか役員レベルです。こういう人が応募してきますかね?。
零細のWEB制作会社にはWEB制作歴5年の人なら掃いて捨てるほどいますが、マーケッター経験がある人はほとんどいません。担当するクライアントがそこそこの大きさで予算がないと、「単にWEBを制作する」だけで「マーケティングまではお金をかけられない」からですね。ABテストひとつやるんだって年間500万円くらいのコストはかかります。わたしの今のクライアントも上場企業が数社あり、そういうところはマーケティングにお金と手間を掛けることに抵抗がありません。
わたしのマーケティングの引き出しも、15年くらいの間に大企業さんと仕事したときに蓄積されたものが多いです。ここで得たノウハウをこっそり中小企業のクライアントにも使っております。そんなわけで、マーケッターに必要なのは
豊富な成功体験から築いた知見の多さ
ということになるわけです。成功体験が少ないと引き出しも当然少なくてマーケッター域になかなか到達しないのです。
そんなわけで世の中にWEBマーケッターと言える人材がいるのは、中堅以上の尖ったWEB制作会社か、大企業の宣伝部、広告代理店傘下のWEB会社、等になりますよね。この人たちは現在もそこそこの給料をもらっていて、独立しようと思えばいくらでもできるので、あえて名古屋グランパスの平社員に応募してくるのかというのが謎です。
続いてキャリアです。上にも書きましたが、WEBマーケッターはいろいろな企業でいろいろなテストを行って経験値を積むことで自分の価値を上げます。しかし名古屋グランパスに就職したら、今後は名古屋グランパス1本になります。名古屋グランパスの社長を狙うならよいですが、そうでない場合、いままで築いてきたWEBマーケティングのキャリアはそこで終わりです。繰り返しますが、「グランパス命でグランパスと心中しても良い」という人なら応募してくる可能性はありますけどね。
名古屋グランパスにWEBマーケッターは必要か
実は私はクライアントで「どういう人材をWEB担当にしたら良いか」と相談されることが多いのですが、グランパスさんのように「インハウスで専門家を抱える」ということは賛成しません。逆に数年程度経験あるレベルだと知ったかぶりとかする人もいて、非常に仕事がやりにくい。まっさらでやる気がある素人のほうがよほど使えます。特に先入観がなく、経験を数値化できる人が良いです。
グランパスさんも予算があれば外部の実力と経験がある外注先に発注すればよいのでしょうが、それはそれで予算がかかる。なのでインハウス(内部担当者で)体制でやりたいと考えたのでしょうが、まかり間違って転職してくる人は「いったいどれくらいのマーケティング予算を自由に使えるのか」を重要視します。経費削減でインハウスなら誰も来ません。
また、インハウスにはリスクがあります。ABテストやアドワーズの運用ならば、ドキュメントを作成していればたとえ担当者が辞めてもノウハウが引き継げます。しかしマーケッターの守備範囲はかなり広いので、もし成功しても担当者が辞めてしまうと物凄い打撃になってしまうのです。だったら実力のある外注先とやるほうが賢いです。
おそれいりこだし部長が加ト吉(現テーブルマーク)を退職されたあと、ソーシャルの運用が停止してしまったのは有名な話。まあそんなことの前にグランパスさんはスマホサイトをちゃんとやった方が良いですよ!
おまけ グランパスのサイトにはなにが足りない?
ここからはオマケ。コレを書くのにグランパスをはじめ日本のほかのサッカーチームや野球チームのサイトをいくつか見てみましたが、どれも似たり寄ったり。スマホ対応さえされてなく、お知らせ情報ばっかりです。ひと言でいうと
言いたいことばかりでファンが知りたいことが分かりづらい
に尽きます。ニューヨークヤンキースのサイトとか見ると、レベルが違いすぎる。どこが違うかって「顧客視点」です
おそらく運用コスト手間も日本の球団がかけてるものの10倍から数十倍はかけているはずです。もちろんスマホ対応もされている。WEBを経費と見ないで投資と見ている違いです。
たとえばですが、ファンの中でも非常にコアな人たちはほっといても試合に来てくれるので、球団側はカープ女子みたいな新規のファンを獲得したいわけです。最終的にはチケットを売りたいのでしょうが、その前に一番必要なのは
我々はファンとともにある!!
ということをWEBを使って知らしめる、つまりセルフブランディングが一番大事なわけですよ。であれば、サイトは「ファンが知りたいこと」を一番トップに持ってくるべきだし、試合中にいま選手交代した選手のデータをスマホで見てみたいなんていうのは当たり前の事。「ペナルティキックをいまから蹴る選手の成功率」とか自分は蹴る前に知りたい。しかしスマホ対応にさえなっていないとそれも無理。
ヤンキースは人気選手にスポットが当てられているのに、グランパスのは球団のお知らせばかりに見える。トップにもってくるべきはやっぱり「前回の試合で大活躍した選手」であり、選手の肉声であり(ファンなら何度聞いても泣けるよね)、「今期待できるのはこいつだ」的なものをファンは見たいのではなかろうか(サッカーファンじゃないので違ってたらゴメン)。
WEB戦略にあたっては、優れたWEBマーケッターを1人いれるということより、まずはABテスト、いやanalytics解析でもいいので、ファンはなにを求めているのかを調べるのが先じゃないだろうか。ひとりの担当者に頼るより、球団全体で「WEBを使ってファンが望む物は何か」を全員で共有しようという意識改革をすべきです。
でないと仮にめちゃできる人が入っても、「お知らせを上に入れとけ」という経営陣とか上司とぶつかって辞めちゃうと思います・・・。
@Isseki3 名古屋は現在 http://t.co/NzS65RVgFZ に外注しています。過去に契約社員募集→来ない→社員募集→来ない→社員二次募集(今ココ)という状況です。何故募集に応募がないのか分析できていない状況で、専門家に何故来ないのか指摘されるべき段階かと思います
— 名古屋グランパスについて語り合うページ (@grapodotnet) 2015, 5月 25
制作会社は関係なく発注側の問題だと思うけどね
チケットの売り上げ上げるだけなら、この本読むだけで何%かは上がると思うよ