最近、少子化とかにかなり詳しくなりました。ブログ書くためにいろいろな統計データ調べているうちに、いっぱしの研究者気取りです。朝生に出て激論できるレベルまであと少しです。
さて「課長島耕作」の弘兼憲史氏がSAPIOに書いた記事で炎上したという話、ちょっと前のネタだが今頃知りました。
弘兼憲史氏「イクメン部下は仕事から外す」で炎上 「昭和のクソみたいな価値観は滅びろ」
弘兼さんが育児に熱心に参加するイクメンが、会社でも仕事ができて出世するという話は「現実には難しい」と書いて、自分の部下が「今日は子供の誕生日だから緊急会議欠席します」と言ったら仕事から外すと書いたら炎上したそうな・・
ところがその批判が的外れ
「いままではそういう世の中だったが、それを変えないと人口増えなくて日本全体がだめになりますよ、という話なんだがな。昨今の流れは」
「少子化の戦犯がいまごろ開き直る意味ってあるの?」
要するに、イクメンを良しとしないと子供が増えない、という理屈なのだが、一見正しそうに思えるけど、データで見るとこれがとんでもない間違いと分かる。みんな勘違いしすぎ。ではどうして少子化が起こったか、推測してみましょう。
これが少子化に至った経緯です。
モーレツ社員が占める割合が一番多かったのはいつか・・それは戦後から高度成長期ですね。三丁目の夕日の世界ですが、私的にはこの半村良の小説をオススメします。戦後の荒廃からどうやって復活したのかよく分かります。
高度成長期は一般に1954年から1973年くらいとされています。このときの合計特殊出生率(1人の女性が生涯で生む子供の数)はどれくらいでしょう。
子供いっぱい生まれてる!!!
1966年のひのえうまの年を除き、合計特殊出生率は軽く2を超えてました。高度成長期の終わり頃には第2次ベビーブームが来ています。つまり弘兼さんの世代は少子化の戦犯どころか、反少子化に貢献した世代なんです。モーレツ社員はモーレツに働くけど、モーレツに子供も作ったんですぜ。モーレツ社員は島耕作見ても肉食系バリバリじゃん。1巻目は1人の絵柄だけど2巻目からの表紙はすべて女性と一緒のツーショット!!
少子化はいつから始まったのか
いつから出生率は下がったのか・・・グラフで見ると1984年くらいからです。1987年には急激に下がって1.57になり、1.57ショックの年となりました。いまははもっと低くて1.39くらいをうろうろ・・・
それでは1984年あたりからなにがあったのかというと・・・
1986年12月から1991年2月までバブル景気
日本中の土地が騰がり、株も給料もどんどん騰がるし、もう日本中がはっちゃけて遊びまわった時代ですね。当時、スキー場なんてリフト2時間待ちが普通でした。若者はみんな車を買って(白のマークII買うともれなく女子が付いてきたらしい)、ディスコで踊ってました。ちなみにジュリアナはバブル崩壊後なのでこのあとです。バブルを一口でいうと
日本人が遊びに目覚めた!!
ということじゃないでしょうか。モーレツに働くより、遊んでいるほうが楽しい。子供が1940年代のように5人もいては好きなこともできない。だから子供の数は少なくして自分たちの人生を楽しもう的な感じになったのではないかと思います。つまりバブル期に結婚した人たち、いまでいうと55歳〜60歳くらいの人が第一期の少子化戦犯ですな。それが証拠に
バブル期開始と共に、未婚率が急上昇!!!
そしてバブル崩壊後、日本は長いトンネルに入る。景気悪化で女性も積極的に社会で働かないといけないから、ますます子供の数は増やせない。モーレツ社員はバブル期に絶滅種となり、徐々に生殖本能も弱まってきて今につながっているのです。先日発表された総理府の調査では、若年層が結婚しない理由のナンバーワンが
経済的な理由を押さえて「自由に暮らしたい」がトップ。またこちらでは
3人に1人が結婚する意思なし
さらに
恋愛が面倒… 恋人いない男女の37%「恋人いらない」
未婚で恋人がいない761人に「恋人が欲しいですか」と尋ねると、「欲しくない」という回答が37・6%に上った。複数回答で挙げた理由は「恋愛が面倒」(46・2%)、「自分の趣味に力を入れたい」(45・1%)が多かった。交際する上での不安(複数回答)は、「出会いの場がない」(55・5%)、「自分は魅力がないのではと思う」(34・2%)と続いた。
で、かなり生殖能力とか失ってる感が・・・
顕著なのは男女とも年齢が若いほど結婚意向は強いこと。20代女性では9割以上が「結婚したい」「すぐにでも結婚したい」「2~3年以内に結婚したい」「いずれは結婚したい」と思っているのに、加齢とともに結婚しなくてもいいや層が増えていく。男性は真逆で「すぐにでも結婚したい」と考えるのは30代が突出(悲!!)。ということで結婚したい20代女子は30代男子を狙うべし、です。
ゆとり世代。草食世代は子供が減る
牛とか馬は一頭ずつしか子供を産まないけど、狼とか普通に5頭くらい1回の出産で生むのは「肉食系は多産」という表れかというのは冗談だが、「のんびり暮らしたい」「自分の生活を大切にしたい」と思うと子供の数は最小限にしておこうになりがち。さらには「結婚もしなくていいや」になってくるわけです。これがぶっちゃけ、現代の少子化の根本だと思うんですが、どうでしょう。
旦那がイクメンなら奥さんは働いていると思うのだが、これだけ手を掛けて育てられるのはせいぜい1人か2人。高度成長期みたいに兄弟が4人も5人もいる場合はほったらかしで、全員の運動会とかお誕生会してる場合じゃなかった。兄弟の上が下の面倒を見てました。子供をたくさん産むなら「ほっといても育つ」くらいのおおらかさでないとダメだと思うんだが、いまの日本じゃ自分も含めてそんな考え方は持てないよね。
加えて若年層のお金の無さ!! 結婚どころじゃない。高度成長期はどんどん給料も上がるから、モーレツ社員としてお父さんは必死に働き、子供もたくさん生んでも平気という意識が絶対あったと思うが、いまは富が高年齢者層に集中し、若年層の収入や貯金は異常に少なくなっている。→関連エントリー
ここをなんとかしないと子供なんて作る気にならないよね。あ、その前に結婚もできないよね。
オマケ モーレツ社員と社畜との違い
弘兼さんのついてのネットの反応で「若年層はわかってないな」と思ったことがひとつ。それはなにかというとモーレツ社員と社畜の区別がついてないことです。
島耕作の最初のほうを読むと分かるが、高度成長期には週休二日制なんてまだないから土曜日は普通に出勤。でもって残業の山でした。当然、残業手当がでるのも稀。今なら完全にブラック企業なわけで、その中でモーレツに働いている人たちは社畜に見えるわけだが、実はそうでもなかった。モーレツ社員と社畜の間には大きな壁がある。ひとことでいうと
モーレツ社員 → 自分の意思
社畜 → やらされてる
と言い換えることができる。「絶対出世してやる」「この仕事をものにしてやる」とがむしゃらに働くモーレツ社員は、「働いている」のであって「働かされている」のではない。ブラック企業にこき使われている社畜は、本来はそんなに働きたくないわけで、ここが根本的に違うわけです。弘兼さんは、「自分の意思で働くヤツを部下に欲しい」と言いたかったんじゃないかな。こき使うけど、その分俺が引っ張り上げて出世させてやる!!的な。島耕作のシーンによく出てくるわ。
マラソンが趣味のランナーは走ることが楽しくてしかたないが、会社の研修で普段運動しないでゲームオンリーの人が毎日10キロ走らされたら「うちはブラック企業だ」になるでしょ。それと同じです。自分の意思でやりたいことをやるならどれだけ働いても苦じゃないし、自営業とか社長はみんなかなり働いていると思う。高度成長期は夢があったのでハードワークでも楽しかったし、子供もたくさん作った。お父さんがくたくたになって夜勤から帰ってくると、子供が3人くらい出迎えて「お父さん、お父さん」って肩揉んで・・・みたいなシーンですわ
でも、いまの若者にそれは理解されにくいよね、というのが弘兼さん炎上で受けた印象でした。