先日、ホリエモンから「マンガHONZに寄稿してくれませんか」と言われまして、とりあえずさくっと1本目書きました。
自分、実は10年くらい前までは都内に通っていたので、コミック誌のメジャー系ほぼ全てと、主要週刊誌のほぼ全てを電車の通勤時に購読しておりました。かなりの速読なので、調布から渋谷くらいまででもコミック誌なら2冊は消費してしまう。相当に散財しておりまして、当時の会社(現LINE、旧ライブドア)では「マンガ配給機」と呼ばれていて、わたしが出社してくると「マンガください」と若者が列をなしたものです。いや、マジで!!
そんな私ですが、実は単行本はほとんど買ったことがない。連載は雑誌で読むべしという漫画家にとっては全く嬉しくない読者です。漫画家っていうのは雑誌の連載でアシスタントのギャラや経費を稼ぎ、単行本の売り上げで稼ぐのだ。単行本を買わない客は客じゃない。ついでに言うとブックオフとか漫画喫茶には死んで欲しいとみんな思ってるはずだ。
で、本日は日曜でもあるのでマンガHONZに書いた内容に書き増しして掲載だ。マンガHONZには今後もちょこちょこ書くので乞うご期待だ。
マネジメントの奥義はちばあきおの不動の名作「キャプテン」にある
いまを去ること1万年くらい前。つまり自分が大学生の時、立川の友人宅で麻雀をしていて5人だったので順番に1人抜けることになり、そこで手に取ったのが「あしたのジョー」のちばてつやの実弟のちばあきおの「キャプテン」であった。作者のちばあきお氏は、その後タクシーから若くして飛び降り自殺をされ、残った作品は数作。代表的なのがこの「キャプテン」と、そこからのスピンオフの「プレイボール」である。
徹マン中に手に取った「キャプテン」の単行本であるが、そのまま貪るように読み続け、麻雀は離脱。全巻借りて帰った。それから25年も経過したあとで単行本を全巻揃えた。ちなみに自分が漫画の単行本を紙で全部揃えたのは「キャプテン」と「プレイボール」と「火の鳥」だけ。それくらい読みたいと思ったわけです。電子書籍が出てからはスペースを取られないのでけっこう買ってるが・・・
で、「キャプテン」だが、古い漫画だけれど読む度に心を打たれる。下町の中学の野球部の代々のキャプテンの話である。どこにもスーパースターはいない。魔球もない。天才もいない。泥だらけになって基礎練習を反復するのみ。
谷口はとにかく努力と根性の人。2代目の丸井は谷口を慕い、谷口のようになろうとする、やはり努力の人。3代目のイガラシは頭が切れ、4代目の近藤は才能はあるがバカで・・しかし実は・・・という流れなのだが、大人になってから読むと、各キャプテンのマネジメントのタイプが違っていて面白いのだ。
自分がひたすら頑張ることで周囲が付いてくる、口うるさく嫌われがちだがそれを乗り越える、クールで頭が切れて信頼を集める、など、マネジメントの仕方が違うのに、それぞれ信頼を集めて成功していく。これって企業経営も似たようなものだなと思ってしまうのが大人の醜さだよね。
もうひとつ。この作品には「監督」が出てこない。もちろん相手の強豪校には監督はいる。しかし、墨谷二中では生徒たちが自主的に厳しい練習メニューを考え、実践し、試合に臨む。誰にも指導されたり命令されたりしない。これが実はこの漫画の世界観なんだと思う。…
誰もが好きでやっていて、誰もが苦に思わない。ヱヴァンゲリヲンみたいに「なんでこんなことしないといけないんだ」とか、誰も考えない。そう考える人は野球部を辞めてもいいし誰も引き留めない。ある意味、めっちゃクール。
嫌な仕事を無理矢理させられるからブラック企業で社畜。自分で夢と意欲を持ってやるならモーレツ社員という感じである。いまの若い世代は読んでもピンと来ないかも・・・。
仕事で疲れたとき、仕事にいまひとつやる気が乗らないとき、キャプテンを最初から読むと、なんだか力が出てくる。「自分が好きでやってる仕事で弱音吐いてるんじゃねぇ」と思うのだ。
いまの少年漫画って「進撃の巨人」にせよ「ONE PIECE」にせよ、基本的に「現実的にはありえない世界」「空想の世界」ばかりで、これは今の子供が夢を失っている裏返しなんではないかと思う。リアリティ溢れる世界を描いても「そんなことは現実では無理」になってしまう。キャプテンの描かれた時代はまだ現実の世界に夢があったということをしみじみ感じさせますな〜
ところで・・・
わたくしは起業するのであれば数年は大企業で働いたほうがいいと言っております。なぜかというと「マネジメントとはなにか」が学べるからだ。大企業では企業教育で確立されているので、数年もいればマネジメントの手法がわかる。尊敬できる上司を見つけてその真似をしてもいい。「こいつみたいたいな上司になりたくない」と思えば反面教師にする。
しかしわたくしの場合は「そもそも管理されたくない」という人間のため、自分が会社を立ち上げて社員を入れたときに「管理しない方針」を取り入れたため、自爆しました。www 放任されたほうはたまったものではなかった模様。いまでも仲の良い元社員もたくさんいますけどね。
考えてみたら自分は球技のような団体競技は全くだめでした。高校は柔道、大学は実戦空手とサーフィンしてました。いまもサーフィン・・集団的行動は全くできないので協調性0です。
そしてスピンオフ版のプレイボールでは、諦めないことを学ぶ
プレイボール 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
「キャプテン」でもっとも尊敬を集めた(漫画の中では)初代キャプテンの谷口は、のちに墨谷高校に進み、弱小の野球部を強豪校に育て上げる。これが「プレイボール」というスピンオフ版だ。
中学の時に激戦で指を折り、そのままにしておいたため(これもむちゃくちゃだけど)人差し指が曲がりっぱなしになってボールが投げられない。しかし野球が諦めきれずにいる谷口を見た他の運動部が声を掛ける。だって中学時代に野球で日本一になったエースだもんね。
特に親身になってスカウトしたのがサッカー部のキャプテン。持ち前のガッツでいきなりサッカー部で頭角を現すのだが、それでも野球から心が離れない谷口をサッカー部のキャプテンが殴りつける。そして「野球をやれ」というんですよ。泣けますよ。
そのあと谷口は超弱小だった墨谷高校で1年の秋にキャプテンに抜擢され、慕ってくる後輩たちと共に、数年で都内屈指の強豪校になっていくのだ。「墨谷」にも監督はいない。自分たちでメニューを考え、メンバーとともに育っていくのだ。
最後のシーンでネタバレ覚悟で書いてしまうが、墨谷は都内の超強豪校から練習試合を申し込まれる。まあ帝京か堀越みたいな高校ですよ。相手はプロ選手予備軍みたいなのばっかりで、最初は善戦するがすぐにこてんぱんにやられる。相手はいまのうちに墨谷を叩いておいて自信喪失をさせようということだったのだ。
谷口は帰りの電車でさすがに疲労困憊して考え込んでしまう。が、そこでメンバーがいうのだ
キャプテンが落ち込んでどうするんですか!!
谷口は心を奮い立たせ、学校に戻るやいなや気合いを掛けながら全員でランニングを開始する。へたりそうになる気持ちを「キャプテンだから」という意思で奮い立たせるのだ。これ、苦しいときの会社経営の根幹ですよ!!!
胸に来ます!!!
ということで雨の日は漫画でも読みましょうと。