一昨日届いたGoPro4 Sessionと共に・・・
昨日のブログ書いたら本日安倍首相が国立競技場の見直しの記者会見って・・どんだけ予言が当たれば気が済むんだよ。ちなみに今年一番アクセスがあったのもこの予言的中のエントリーです。
さて、わたしのメルマガには起業についての質問がかなり来ます。とはいっても「将来上場する」とか「世界征服する」という野望の方はほとんどおらず、小さく正しくつましくやっていければよいという方たちが多いです。そんな皆さんに、ひとつの面白い事例があるのでご紹介します。
わたしのクライアントにラヴサーフというサーフィン関係の輸入とパイロットショップをやっている会社(社名はラスオラス)があります。ここが3年前に輸入を開始して、かなり人気があるサーフボード用のワックスがあるんですが、その話が非常に面白いのです。ブラジル製のワックスで、昔からあったSEXWAXが300円くらいだったのにたいし、こちらは税込み972円と3倍の価格ですが、めちゃくちゃ売れているんです。
ちなみに米国製の偽物も出てます。右が本物でブラジルメイド
日本以外ではアメリカやオーストラリアでもプレミアムが付く勢いで売れてまして、入荷があると買い占めが起きる。プロサーファーが買い占めちゃうのです。
■サーフィン基礎知識■ サーフボードはスノーボードと同じようにワックスを塗らないといけません。しか〜し、スノーボードとかスキーは裏側に滑りやすくするために塗るのですが、サーフボードは表側に足がすべらないように水温に合わせたワックスを塗るのです。夏になるとハードオフで買った中古のサーフボードを抱えて海に来る海水浴客(サーフィンできないのでサーファーではない)がたくさん現れるのですが、たまに裏側にゴリゴリと塗ってるヤツがいます。オイオイ・・・
このFU-WAXですが、Fuad Mansurというブラジル人のジー様がひとりで工房にこもって作っています。1日に作れる量は10時間働いて100個入りが12箱。つまり1200個。ブラジル人なんでカーニバルの時は1ヶ月も休むらしく、年間たぶん2000箱も作ってないわけですが、日本にはその4/1くらいが来ている模様です。仮に1個作っていろいろ引いて1ドルの純利益としても1日1200ドル儲かり、200日働くと24万ドル、3000万円の純利益ですのでたぶんブラジルではいい暮らしができるでしょう。
このワックスがここまできたヒストリーを詳しく
実はこのジー様。ブラジルで古くからサーフショップをやっていました。しかし今でこそ世界クラスの選手がたくさん出ているブラジルですが、昔はワックスの入手も厳しく、試行錯誤を繰り返していたけどできたものは失敗作でした。つまり
グリップ力が強すぎた!!
わけです。というのは昔のサーフボードって今みたいに跳んだり跳ねたりしない。この映画見たら分かるっしょ
ですが、いまはエアーとかもポイントが付きます。エアーっていうのはこういうやつね。
こちらはラヴサーフで契約しているプロサーファーの湯川正人君。昔「テラスハウス」に出てました!!
こういうエアーとか、激しく動く今のサーフィンでは、昔はダメだった超強力なグリップが必要になったわけです。しかしこのFU-WAXは広告宣伝をして認知を広めたのではなかった。ここからが面白いのです。どうして広まったかというと、ブラジルでプロ大会が開催されたときに、プロがFU-WAXを見つけてきてカリフォルニアに持ち帰ったのです。そこで「すごいワックスがある」という都市伝説のように噂だけが広まったというわけ。
ある日、いまの発売元のラヴサーフの社長である西井さん(プロサーファー)が、カリフォルニアのトラッセルズで撮影をしていたところ、隣にスーパースターのケリー・スレーターがやってきて、ニューボードにゴリゴリとワックスを塗りだした。ふと見ると、手にはFU-WAX。「噂じゃなくて実在した」と興奮してどこで買ったのか聞いたらブラジルで買ってきたとの由。
ケリー・スレーターその人。
ここまでなら話は面白くないのだが、後日、知り合いがFuad Mansurジー様の息子ということが判明。トントン拍子に話が進んで日本総代理店となったわけです。価格が普通のワックスの3倍ですが、初心者はお金を使わないからもちろん買いませんけど、わたしなんざ、これがないと海に入れません。コレのおかげでいままでできなかった技もできるようになったしね。低レベルだけど・・ww
FU-WAXにおけるスモールビジネスの成功条件
この事例にはいくつか成功するための必須条件があります。
競合を圧倒する商品の品質
Fuad Mansurジー様いわく、製造の材料は他社と同じで、だから分析しても差は分からないという。製造方法が特殊で、誰も雇わないのは同じ事をされるとすぐ同等品ができてしまうからなんだとか。自分でめちゃくちゃ試行錯誤を繰り返した秘伝の製造方法は、一子相伝として息子さんだけに引き継がれるそうです。
つまり、一番必要なのは商品(またはサービスの質)なわけです。参入障壁を高くし、誰もが参入できないようにした上で価格を高くして購買力のある「違いが分かる人」に買ってもらうという作戦です。製造をどっかに丸投げして委託するという考え方ではできないですね。
無理してたくさん作らない
工場を大きくして大量生産するためには人を雇って事業拡大しないといけない。そうすると技術の流出が起こり、優位性を失って価格競争にはいってしまう。質も下がる。だから拡大しない。和菓子屋さんとかでも同じようにしているところはありますね。どんなに行列ができても羊羹は1日100本とか・・・そのほうがロングテールで売れる。
特定の知見がある趣味の世界
自分が興味のないジャンルを攻めるのは大変です。日本の大企業が趣味的な商品の開発のピントが甘いのはこのあたりではないかと・・・GoProの社長はサーファーで、自分の欲しい商品を開発してるんですが、日本のメーカーさんで開発部してる人たちは、一流国立大学の理科系出て、研究開発室にこもるタイプが多すぎだと思うんですよ。だからニーズがいまひとつわからないのではないかと。
本当にいい商品、サービスなら宣伝しなくてもクチコミで広がる
これが今回の最大のポイント。ソーシャルの時代なんでクチコミの拡散は半端ない。逆に広告しないと売れないものは、商品やサービスの質に問題があったり、競合分析をしていなかったり、ニーズが分かっていなかったりするケースが多いです。本当にいいものなら、影響力のある人(この場合はケリー・スレーター)がそれを高く評価してくれると一気に広まる。
プロサーファーなんて実はほかのメーカーのワックスと契約してお金もらってステッカーも貼ってるのに、実際はFU-WAX使ってる人多し。だって大会で勝てないと意味ないもんね。
よく、「インフルエンサーに渡して書いて貰う」とか言う人がいるんですが、わたしにも安いiPhoneケース送るからブログに書いてくれとかたまにきます。本当にいいものなら自分で買うし、1000円やそこらのことで提灯記事書くわけないじゃん。インフルエンサーってなんでインフルエンサーなのかというと、一般の人より早くいろいろな情報を集めているからで、そこで目に止まらないようならそもそもダメって事なんです。
そんなわけで、ひょっとしたらあなたもコレで年収3000万行けるかもしれないよというお話でございました。