カップヌードルの新CMって、自分にはジュラ紀のそれにしか見えない件

2016年4月1日

昨日、Facebookでカップヌードルの新CMについて流れてきて、みなさん「素晴らしい」「面白い」と絶賛されているので、不肖私が空気読まずに冷水ぶっかけたいと思います。


ちなみにカップヌードルは世界各地でご当地モデルがたくさんある。
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こちら、パラオで買ったブラロ味(フィリピンの牛すじ)です。怖くて食べてない。ご当地カップヌードルには時として日本人の口には絶対合わないのがあるもんですから・・

広告とは何か

広告とはなんのためにやるものだろうか。
簡単だ。商品やサービスを浸透させて企業の売り上げを上げ、利益を得るための投資である。その前段階として、直接の売り上げにはならずとも、企業イメージのアップ(ブランディング)を狙ったものもあり、最近は就活向けにそうしたものが結構流れます。「三菱地所を見に行こう♪」とか「クラレのミラバケッソ」みたいなやつですね。

むかし、むかし・・・バブルの頃は広告ブームでもあり、コピーライターやグラフィックデザイナー志望者で溢れた。イミフのアート系のものもたくさんあり、広告賞を受賞するのはそういうものが多かった。PARCOのコマーシャルみたいなのがその代表で、イミフのカッコ良いコピーと綺麗な画像。要はお金があまっていたわけです。バブル崩壊後、PARCOのセゾングループは解体されて虫の息も、絶え絶えになってあれこれ転売されたのはご存じの通り。

この時代、広告は「カッコいい」ものが良いとされていた。車の広告とかもみんなそう。私も自社で車の広告(しかも高級外車の)とか作ってました。車関係のマーケティングとかそういう仕事が一杯ありました。

カッコいいだけの広告には意味がないの時代に

こうした常識にとどめを刺したのは、やはりインターネットの普及にあるのは間違いない。

かつてマスメディアでの広告は、効果測定ができなかった。認知度が何ポイント上がったとか抽象的な測定は限定的にできても、それでものが売れたかまでは分からなかった。広告を打つのは新製品が出たときや、大企業にとっては定期的な「習慣」でしかなかった。「広告ではものは売れないよ」っていう大手代理店の人も普通にいました。広告を大規模に打っても全く売れずにすぐに撤退した商材もたくさんある。花王がテレビCMを大きく削る実験をしたけど売り上げは変わらなかったとか、広告業界ではいろいろ事例があります。

広告でものが売れた!ってはっきりわかった典型例として挙げられるのが、相当昔の博報堂制作の「アメリカではレクサスES、日本ではウインダム」というトヨタの広告が有名だ。車としては地味でパッとしないモデルが、アメリカではレクサスなんだ!ということで思ってたより売れたが、はっきり成功と言えるのは逆に言うとこれくらいしかなかった。毎春にやってた資生堂対カネボウ対コーセーの春の化粧品コマーシャル合戦も、JALとANAの沖縄合戦もいまはもうない。何も考えずに毎年大金使って同じことをしていた会社はみんな弱体化したり潰れたりです。

21世紀に入り、ネット広告が進出してくると、いままでとは違い、「広告効果」がはっきりとわかるようになったのが決定的でした。新聞や雑誌がネット広告にほぼ食われたのは、広告の費用対効果がネットに全く及ばないことが鮮明になったから。ネット広告は「いくら掛けたらいくら儲かったか」がはっきりと数値化できる。小規模なテストもできるから最初からハイリスクで何千万、何億と掛ける必要がないし、データが完璧にできるのが大きい。

広告業界出身者でも、はっきりと「効果を考えない広告はクソ!」と大声で言う人も出てきた。

なんのために企業は利益を追求するのか

当たり前ですが、企業は利益を出すために存在します。故松下幸之助も「利益を生み出せない経営は、社会に何らの貢献をしていないということであり、本来の使命を果たしていない姿である。「赤字は罪悪」といってよい」と言っています。企業は利益を出して税金を納め、従業員の給料を上げて、設備投資をしてさらによい製品を開発して社会に喜ばれるために存在するのです。しかし

このCMではカップヌードルは1個も売れません

同じ日清でも新垣結衣のチキンラーメンのコマーシャルなどは、あれ見て「くーっ!食べたい」と思った人も多いはずだから、売り上げには確実に貢献している。

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しかし今回のカップヌードルの広告は、全く売り上げに貢献しないだろう。いや、カップヌードルに限らず、携帯キャリアのコマーシャルも、ポメラニアンがウインクしようが、かぐや姫がキャバクラやろうが、それで誰も携帯なんて契約しないよ。新しいiPhoneでたり、実質0円とかで動いてるだけですよ。
こうした広告には、数百億円単位のお金が使われていて、それなら長期契約ユーザーの高い通信費を下げたほうがよほど離脱が減る。窓口の人の給料に還元したほうが、よほどサービスも良くなってやる気も出ますわ。

話が飛んだが・・・このカップヌードルの広告が素晴らしい。面白いと言ってる方は、このコストがどこから出ているか、考えているのかなと思う。キャリアの通信費と同じく、消費者が製品に対して払ったお金から出てるわけですよ。面白いって言ってるが、これは無料なのではなくて、商品代金に含まれているんです。

それだったらこの数十億円のお金で、日清の社員の給与を上げたほうが企業モラルが上がるだろうし、消費もしてくれる。日清ホールディングスの給料はすでにそこそこ高いから工場の労働者の給与も上げてやってください。研究費や設備費用に投資してくれれば、美味しい新商品ができるかもしれないじゃないですか。

日清食品の販売状況は、引き続きカップめん類が売上を伸ばし前年同期比で増収となりました。
カップめん類では、「具材充実!!」をコンセプトに昨年4月にリニューアルした「カップヌードル」群の売上が好調であったことに加え、新たに発売したしっかり食べ応えはあるのに低カロリーな「カップヌードルライトプラス」も売上増に貢献しました。また、昨年10月より新しいCMを行った「日清のどん兵衛」群も、かき揚げをさらに厚く食べ応えのある “鬼かき揚げ” にリニューアルした「日清のどん兵衛 かき揚げ天ぷらうどん」を中心に好調でした。袋めん類では、ごまラー油に炒りごまを加えリニューアルしたロングセラー商品「出前一丁」が売上を伸ばしました。この結果、報告セグメントにおける日清食品の売上高は、前年同期比2.9%増の1,675億81百万円となり、セグメント利益は、前年同期比5.4%増の199億47百万円となりました。

日清のサイトより・・
なんか凄く儲かったので節税のために経費使ってやるかみたいな香りがします。わたし。

このテレビコマーシャルは、高給与ランキングの上位を独占するテレビ局の社員の給与になるだけです。広告代理店はプレゼンしたり企画考えたり、コマーシャル作ったりメディア押さえたりと、まだマージン分働いているけれど、テレビ局員は何もしません。持ち込まれたコマーシャルを公共の電波に乗せて流すだけで高額の給料がもらえます。

なぜテレビ局は利益率が低くても、社員の給料が1300万円超なのか?

ネット全盛の時代、お金が余って余裕があるからといって、なんの役にもたたないコマーシャルに数十億、数百億を使い、担当者の自己満足でテレビに大量に広告を打ち、宣伝広告費として経費として計上して納める税金を少なくすることを、ユーザーが誉めてどうするのかと自分は思います。この金で奨学金制度くらい創ってもバチは当たらないよ。そうしてくれたらカップヌードル100個買うよ。約束する。

少なくとも広告を打つことで商品が売れれば消費が拡大し、景気にいい影響もでますが、テレビ局の社員の高給与を維持してもたいした経済効果はもうないです。つまり

金の無駄遣い

そんなこと言わないで、楽しけりゃいいっていうのも個人の見解なので別にイイのですが、私的にはちょっとこういうのを単純に「スゲー」とか言うのはどうも・・・なのでした。
自分の仕事も「効果が第一」なので、「単に飽きたのでサイトをリニューアルしたい」みたいな相談は受けておりませんので念のため。そういうことでリニューアルしても無駄金です。

※付け加え
ブランディングのためにはいいという意見が来るのだが、そもそもメーカーにとってのブランディングは、その商品の優位性によって確立されるべきもので、Appleや昔のソニーや日清、みんなそうです。イミフのメッセージでは確立できないと考えます。なのであんなブランディングは商品の販売には全く意味がなく、ブランディングにはなりません。「ブランド力」とはその商品を消費者が所有したくなるパワーですが、今回のCMでは誰もカップヌードルなんて食べたくなりません。

震災のあと、本田が「負けるもんか」というCMをうち、感銘を与えてブランドイメージが向上しました。しかし今回の出演者は大半が「モラルハザード」して干されて復帰した方たち。自分たちにそもそもの責任があるわけで、本田の「復活」とは訳が違う悪ふざけ感が強いです。実際「矢口が出てるだけでダメ」とかいう人もいました。嫌悪感もたれてどうすんの。

Amazonで自分の本が3日目に入ってもまだ1位なのであるが、さすがに中島らもさんのこれが本日のセールになっているとヒシヒシと追いかけてくる足音が聞こえますな・・・

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