少し前。Facebookで友人がソニーについて、「テレビなんてもうオワコンなのに、しかも韓国企業が世界をリードしているのにいまさらやってどうするの」的な書き込みをしていた。
確かにどんないいテレビを作ったところで、いまや日本の民放は子供と老人しか見ない。制作費かけないお笑いタレントのクイズとトークばっかりを見るために、どこの誰が超高性能のテレビを買うのだろう。ほかに楽しみのない「三丁目の夕日」の時代とは違うのだ。ソフトがないのにハードが売れるわけがない。
ケーブルテレビなどでは海外物のドラマが見られるが、しょっちゅう時間帯が変わったり、途中で打ちきりとか日常茶飯事。しかもこんなの見て楽しめるのは都会の人だけだ。(参照エントリ)。いまやメインのテレビ視聴者である田舎のお年寄りは、「24」と「セブンイレブン」も区別が付かないはず(失礼!)。日本では売れないからアジア新興国でと思っても、いまやサムスンのブランド力のほうが強いですよ。それとAppleのフルコピー作るのに恥ずかしさを感じないパワーも。
一時はウォークマンを生み出して世界を席巻したソニーはじめ日本の家電メーカーが、なぜAppleの後塵を拝しているのかについてはよく語られている。とにかく独創力が全く無くなってしまっている。スマホにしても細々とした機能は追加するものの、本筋の「あっと驚く新商品」が無い。
この原因を「すでに巨大になりすぎて終末を迎えつつあるから」とか、「創業者が天才だっただけで後継者はサラリーマン(永江理論)」という具合に解説している場合が多いが、もうひとつ考えなくてはならないポイントに気づいた。それは
今の日本は大企業じゃなくて、ベンチャーだって凄いの生み出してないから
っていうことである。別にソニーじゃ無くても凄い新製品作ってないなら、ソニーの問題では無くて現代の日本人の資質の問題だという仮説も成り立つ。で、先日、昔買った「鉄腕アトム」の文庫本を読みながら、ふと思い当たったことがある。
自分の子供の頃、少年漫画の筆頭はSF物だった。しかも近未来ものだ。「鉄腕アトム」「鉄人28号」「サイボーグ009」とはじまり、どれも日本の漫画文化の黎明期にあたる名作ばかりだが、先日公開の「三丁目の夕日」にも出てくるように、当時の少年誌は読み物のグラビアがあって、「空飛ぶ巨大戦車」とか「立体ホログラム映像型の電話が未来には普及する」みたいな科学空想ものがメインだった覚えがある。つまり「近未来には夢がある」という前提で描かれている。
しかし、そのうち、宇宙戦艦ヤマトやガンダムの時代になると、「近未来は戦争ばかりでいいことない」という世界観に変わるわけであります・・・。
で、いまの少年漫画を見ますと、SF物は皆無。それどころか「ONE PIACE」や「ナルト」なんて現実世界でさえない。現実の世界では制限が多すぎて書きようがないので別の世界の完全絵空事になっている。現実逃避と言っても過言では無いくらいだ。
別に漫画が悪いと言ってるわけじゃない。商用だから売れるところを狙って書くのは当たり前。しかし少年時代に「近未来には素晴らしい事が待っている」という風に育った場合と、「近未来は夢も希望も無いから、別世界のことを想像しよう」という場合では、現実的に何かを生みだそう、という能力が弱くなってるんじゃないかと思うわけです。
テレビも同じで、制作費がかかるから日本ではSFドラマっていうのが全く無い。脚本書ける人も美術の人もいない。タレントも層が薄いから、バラエティでボケかました翌日に宇宙人と戦われてもな・・・ではアメリカはどうかっていうと、AXNはSFものの大ヒットをたくさん飛ばしているし、ユニバーサルはSF専門チャンネルももっている。日本にには2008年に上陸したが、いつのまにか撤退。ちなみに2004年からスタートした「スターゲートアトランティス」にすでにタブレットPCが出ていた。 iPadが出る出ると言われたとき、絶対このドラマにインスピレーション受けてるはずだと思った。
で、ここからが提言である。
新商品、新商品と言われてもアイデアが浮かばないよ、と思ってる開発担当、そしてなにより経営陣には、少年の時に戻ってもらい、SF小説や漫画を読んでもらって一から頭の再起動をしてもらったらどうでしょう。一番のオススメは「鉄腕アトム」です。わたしはけっこう「よくアイデアが出ますね」と言われたりします(自画自賛モードなので笑ってください)が、いまだに時々引っ張り出しては読みます。手塚先生は素晴らしい天才です。このアイデアインスピレーションの塊を後生に残してくれているのに、読まないなんてもったいなさ過ぎです。
ぴったりのキャプチャーがなかなかないので苦労しましたが・・・
タイムマシーンも当然出てきます
今思うと、パンチラの可愛い妹を誕生日に貰えるとか、手塚先生って凄いセンスだと思う・・
自分で歩いて行って自爆する兵器ロボ。フランス製。アルカイダが欲しがりそう
日本の自動車産業がそれなりにまだ世界レベルで頑張ってるのは、もともと将来「お茶の水博士になりたかった」傾向の方が多く就職されているからではないかと、昔、日産とかホンダと仕事したことのある私は考えます。SF好きで機械好きの少年が一番働きたい企業は、自動車メーカーだったんじゃないでしょうか。カルロス・ゴーンだって大の車好きで知られてます。実はうちの父親は特攻帰りで阪大の工学部出てホンダと大手鉄鋼メーカーに就職が決まり、本人はホンダに行きたかったけど祖母に大反対されて(当時のホンダは町工場だった!)鉄鋼メーカーに行ったことをいまだに悔やんでいます。毎日プラモの飛行機作ってる80代です。
しかし日本の家電メーカーの社長、会長で、家電好きっていう人はいるんでしょうか。どっちかというとなにかを生み出したいという傾向の人より、営業や経営のセンスがある人が出世している。が、そんなこと言っていても始まらない。いまから経営陣と開発陣は、一から脳のリセットをするべきです。
「エヴァンゲリオン」ではなくて「鉄腕アトム」で!
夢持ってない人が作った製品に夢があるわけがない!!
※エヴァをけなしてるんではなくて、「夢を持って未来の商品を作る」っていうのとは趣旨が違うからですので、念のため。
「鉄腕アトムは」あまりにも巻数が多すぎて全部集めるのは大変です。幼少の時にオリジナル版を全部持ってましたが40冊以上あった気がする。高校の時にオカンに留守中に捨てられてしまった。もっていたらとんでもない値段だったのに!!!!