西城秀樹さんが心筋梗塞で亡くなりました。
広島医師会のサイトにこんな記述があります。
彼は水を飲まずに入るサウナの常連で、当然脱水症も起こすわけであり、その上に1日3箱以上のヘビースモーカーで、歌手としては一般的常識に欠ける人であったようだ。脳梗塞発症直後日本に帰り東京の病院に入院、ここで厳しく禁煙を指示されたという。平成13年におそらく喫煙害と思われる二次性多血症で入院したこともあり、これと脱水症が脳梗塞の大きな誘因になったと思われる。因みにヘビースモーカーは多血症が多く、血液濃縮(Hb濃度0.2~0.7g/dl増加)が存在する上に彼は肥満傾向にあったため、なおさらに高Hb血症状態にあり、脱水症状と喫煙による血小板活性化が拍車をかけて、脳梗塞へと進展したものと解釈される。主治医による即禁煙指導は当然のことであろう。〜中略〜その主なものを拾ってみると、大病の前に兆しありで、脳梗塞で倒れた1年前に激しい頭痛と虚脱感で緊急入院した時、担当医から禁煙を指示されていたにもかかわらず、この約束を守らなかったことで、医者の言うことは神の声として聞くべきであったと述べている。
先日、テレビで猪瀬元都知事が「自分は紙巻きタバコから電子タバコに変えた。よくあんなタールの塊を吸っていたものだ。電子タバコ(プルームテック)はニコチンだけだから安心」と言っていて医師団からたこ殴りにされていたが、本当にあの人でもこんな無知なのかと思ったわ。
まず、がんとタバコの関係を先に
トンデモ武田教授とか竹田恒泰はよく「タバコで肺がんは嘘。こんなに喫煙率が下がってるのに肺がんは増えてる」とかいうが、まずそれは簡単に論破できる。
肺がんでの死者数は2000年くらいから減少し始めた。これは画期的な医療が開発されたためでもあるが、ピークは2000年くらい。
そもそも喫煙由来のがんはすぐにはならない。自分の知人が数年前に50代で食道がんで亡くなったが若いときにバーをやっていて強い酒と喫煙を毎日していたのだ。食道がんはほぼ喫煙者しかかからないのだが、実際に発症して亡くなるまで30年かかったわけです。
喫煙率は昭和40年からしか統計がないのであるが、JTのサイトでは
昭和40年は男の男性喫煙率はなんと82.3%、年代別に見ると一番高い40代にいたっては86.7%が吸っていた。女性は当時でも女性の平均喫煙率は15.7%。
昭和40年以前がないのであるが、おそらく戦後まもないこともあって暮らしは裕福ではなかったから、ここまでタバコにお金を掛けられるわけもなく、高度成長期になって一気に喫煙率が上がったと思われる。昭和40年はまっただ中。
(追記)国立がんセンターに資料ありました。これは米国のデータです。
朝鮮戦争のあたりで一気に喫煙率上がっていました。肺がん死亡率のピークはその30年後に来ている。
日本の喫煙率の推移はこんな感じ。昭和40年以前がないのでこれは推定です。
がんがん喫煙した人たちはいま70代以上・・・・肺がんになるでしょ、そりゃ・・・しかも寿命がこの間にめっちゃ伸びた。
年代別に肺がんになってる人のグラフ見たらよくわかるよ。
高齢者ほど肺がんの比率が高い。これは数十年前に常習的に喫煙していたためでしょう。特に40年前に働き盛りだった層はめちゃくちゃ多い。これが喫煙由来でなくてなんなのか。さらには男女比で見ると男性の肺がん死者数は2016年で52430人、喫煙率の低かった女性は21408人で半数以下。しかし喫煙率の差ほど大きな差にならないのは家庭や職場での受動喫煙があったからですね。
タバコを吸わないのにお母さんが肺がんで亡くなった場合、いい方はきついが殺したのはお父さんということになる。意図的ではないので過失致死かな。
●喫煙率の低かった女性は肺がんの患者数が男性より圧倒的に少ない
●喫煙のピークから30年後に肺がんがピークになってそれから減少に転じている
●肺がんは、その性質によって4種類のがん(扁平上皮がん、腺がん、小細胞がん、大細胞がん) に分類されるが、扁平上皮がんと小細胞がんは、ほぼ喫煙者しか発症しない
●喫煙率が高かった時の男性に肺がん死者がとても多い
というだけで「喫煙は肺がんの原因にならない」というのはトンデモであるということがわかります。研究データはこちら
ガンになるのに時間がかかるわけだから、喫煙をすぐにやめても肺がんのリスクは下がらない。上記のレポートでも「たばこをやめた人での肺がん発生率は、たばこをやめてから9年以内では吸わない人に比べて3倍でしたが、10〜19年では1.8倍、20年以上でたばこを吸わない人とほぼ同じになる」とあります。
卒煙してから20年経過しないとがんの発生率は下がらない
わけですね。喫煙由来のがんは肺がんだけではなくて、このレベル1のがんはすべて因果関係があることがわかってます。
タールはガン要因、ニコチンは循環器を破壊する
猪瀬さんでも「タバコの害はタールのみ」と言っていた。バカなんだなと思ったがタバコにはもう凄い種類の毒物が含まれているが、その中でも代表なのがニコチンで、ヘロインと同じアルカロイド系の毒物です。精神刺激薬に分類され、耐性と依存症を生じる。
ニコチンが危ないのは、一気に血管を収縮させて血圧を上げることだ。喫煙者は耐性ができてふだんから血圧が多少低くなって吸わないと頭がぼーっとするわけだが、喫煙すると血圧が上がってしゃっきり感が得られる。ところが非喫煙者は耐性がないから、一気に血圧が上がって脳梗塞や心筋梗塞を起こす比率が高いわけです。
厚生労働省のサイトにもあるが、受動喫煙の死者は長時間被曝しないとならない肺がんではなく、脳卒中が最も多いのはコレです。
コンビニの前でたむろして喫煙している奴らの前を通るだけで、非喫煙者の血圧は一気に上がり、脳卒中や心筋梗塞を起こすケースがあり得るわけ。我慢できるとか、できないの問題では無くて危険なんです。
で、話を戻します。
喫煙率と肺がんの発症には数十年の時差があり、それがトンデモにつけいられることになるわけですが、呼吸器、循環器系は発症に時間がかからない。では喫煙率の推移と脳卒中、心筋梗塞の推移は連動するんでしょうか。
またまた東大の五十嵐准教授にグラフを作ってもらいました。
明らか連動してました!!!!
もちろん、喫煙率が下がるあたりから、生活習慣病について知られるようになってきたということもあるだろうが、あまりにあまりの結果。ファイザーのサイトにはエビデンスがあった。
喫煙は脳梗塞や心筋梗塞のリスクを無茶苦茶上げる。これは耐性のない非喫煙者が吸い込むともっとエラいことになる。電子タバコはタールはなくてもむしろニコチンは多く、喫煙者の吐息からも大量に排出される。
喫煙者とヘビースモーカーを比較すると
では、卒煙するとどれくらいでこのリスクが下がるのだろうか。ファイザーのサイトでは
10〜14年!!!!
がんのリスクが平常に戻るまでは20年だが、脳梗塞、心筋梗塞は10年以上だそうです。西城秀樹さんは、2回目の脳梗塞は10年かからなかった・・。
ただ五十嵐准教授が見つけたオーストラリアの論文によると
禁煙後、四年するとほぼ平常に戻る、とありました。
早くヤメロ!!!!
ニコチンを大量に含む電子タバコがアメリカで認可されないのは、紙巻きのような長期の研究データがないからです。高血圧気味だったり、体が弱っていたり、障がいがあったり、抵抗力の小さい乳幼児には、タバコの煙は猛毒なんです。
ちょっとお話変わっちゃいますが、肺がんで亡くなった映画監督の高畑勲さんの葬儀で弔辞を読んだ宮崎駿が、病気で煙草を止めた高畑さんに「いいニオイだろ」とふざけて煙草の煙を吹きかけた話をしてました。盟友の死期を早めるようなことしたってわかってないんですね、きっと https://t.co/h80Cl1WIYf
— ココナッツ (@Sk49Summerdream) 2018年5月19日
宮崎監督、シャレになりません、それ。高畑さんの死期を早める可能性のあること、普通、するか??
西城秀樹さんが医師の言うことを聞かずに喫煙を続けて最初に脳梗塞になったのが2003年。当時の男性40代〜50代の喫煙率はまだ6割くらいあったのは、こうした認知が行き届かなかったためでしょう。しかしいまは違う。これでも吸う人は相当の馬鹿としか思えません。自分で脳梗塞でよいよいになるならまだしも、周囲の人間に脳梗塞や心筋梗塞を起こさせるのは傷害事件と変わりません。炭疽菌撒くのと同じですよ。
本日のセールでKindle版が699円になってたので買った。いまから読む。評価がめちゃ高いから面白そうだ