騒動の発端は5月、国営の中国中央テレビが内陸部・青海省の海抜2600メートルの湖にある養殖場を取り上げ、ここで育てられる「養殖サーモン」が、国内のサーモン市場の3分の1を占めると紹介したことだった。しかし、中国のネットメディア「澎湃新聞」が、その後の取材で、養殖サーモンがニジマスであることを暴露。ネット上で「サーモンと思っていたのは、ニジマスだったのか」など、食の安全性や表示方法に疑問を呈する意見が相次いだ。
みなさん、わかってなさすぎです・・・・
「鮭弁当」、ニジマス使用でもOK 消費者庁が景表法ガイドライン策定
消費者庁の考え方がよく分かっていないかたはこちらをどうぞ
本日は、お魚博士のわたくしが、みなさまにウンチクを授けたいと思います。読売新聞のこの記事書いた記者も是非お読みください。
サケとマスはそもそも同じ
国立研究開発法人水産研究・教育機構 北海道区水産研究所の見解を引用しておきますよ。
結論から言いますと、生物学的に明確な区分はありません。
サケという名の魚はいますが、「ます」というのはサクラマス、カラフトマス、ニジマスなど複数の魚を総称しており、かつ、そのますと称される魚だけに共通するようなサケとの違いはありません。英語では「サーモン」と「トラウト」という呼び方がありますが、欧米では海に降りるものをサーモン、川など淡水で生活するものをトラウトとしている場合が多く、近年は日本でもサーモン=さけ、トラウト=ますと認識している例も一部でみられるようです。日本で昔からそ上が見られたさけ・ますはサケとサクラマスであり、当時はサケとマスで区別には十分でした。しかし蝦夷地の開拓が進むと道東方面に別種のさけ・ますが分布しており、サクラマスとカラフトマスという呼び分けが必要になりました。さらに北洋さけ・ます漁業が始まると日本には分布しないものも漁獲され、漁業者はそれらをベニマス、ギンマスなどと呼び分けました。この時点ではサケだけが特別で、その他はすべて○○マスで統一されていました。しかしながら、流通させるに当たってマスよりサケの方が高級イメージがあったので、ベニザケ、ギンザケという呼び名で販売されるようになり、それが定着して今日に至っているということです。
サケマス族には、「陸封型」「降海型」があります。いわゆる日本の北海道のサケは、日本ではシロザケといいますが、英語では「チャムサーモン」または「ドッグサーモン」といいます。名前の由来はアラスカに釣りに行くとわかりますが・・・・キングなど美味しいいろいろなサケが釣れるアラスカでは
犬の餌用・・・・・(>_<)
なのです。いや、日本のサケも美味しいんだけどアラスカの評価です。このあたりは
をお読みください。開高健の著作は全て読んでいます。
北海道にはほかにカラフトマス(ピンクサーモン)というのがいまして、
魚屋ではアオマスといいます。正直味は落ちるらしく、苫小牧の魚屋では二束三文でした。アメリカではサーモン、日本ではマスだからサケとマスの区別が無い事が分かるっしょ。道東でけっこう釣れます。
陸封型と降海型で名前が変わる。形も変わる
陸封型と思われているマスにも海に降りるものが一部あり、名前が変わります。海と錯覚して湖で育って降海型に変身して大きくなるものもいます。
ヤマメ → サクラマス
※ヤマメは陸封ではせいぜい25㎝とかですが海に降りてサクラマスになると60㎝超えます。
いやいや、違うんですよ。陸封型のマスが海に降りると身の色が赤になります。
北海道にサクラマスを釣りに行ってボウズだったので小樽の寿司屋で食べたサクラマスの握り。日本の海のサケマスはアニサキスが物凄いので生食は不可能。これは1回低温で冷凍してから数日おいて解凍。
ほかにも
アマゴ → サツキマス
イワナ → アメマス
※渓流のイワナは塩焼きにして食べますが、北海道で釣れる大型のアメマスは猫またぎというほどの味で食べる人皆無
ヒメマス → レッドサーモン
のように、降海型は海に降りると見た目もめちゃ変わるのです。一番凄いのはヒメマスで十和田湖、中禅寺湖、西湖あたりにいますが、淡水ではせいぜい20〜25㎝
海に降りると
こんな感じに・・・レッドサーモン、つまり紅鮭になります。マスがサケになってるでしょ。写真はいずれもWikipediaから借りました。
ニジマスはどうなのよ
ニジマスはアラスカでは海に降りる個体はスチールヘッドと呼ばれ、もっともパワフルでスピードのある魚種です。日本の放流されたあと自然繁殖した北海道のニジマスが海に降りてスチールヘッドになっているのがいま熱いんです。
【特別公開】ニジマスよ、海を目指せ!〈日本のスチールヘッド〉
ニジマスはワシントン大学名誉教授のドナルドソンさんが品種改良した超大型になるものを使い・・・
現在世界各地で海面養殖されているものは、大型のドナルドソン種をベースにさらに品種改良されたもので、2-3年で2-3キログラムほど、4-5年で10kg(110㎝ – 120cm程度)を超えるまでに成長する。また商品価値を上げるためにカロチノイドの一種である赤系色素のアスタキサンチンを配合したエサを与えて着色する技術があり、薄紅色のサーモンピンクの身になる。このようなタイプのニジマスの、食材としての名称を、日本語(和製英語)で「サーモントラウト」と呼び、刺身や寿司などの生食がメインとなる。
wikipedia
ノルウェー、チリ産のトラウトサーモンはみんなニジマス
なんですよ。養殖なので安定供給ができ、安いんです。もちろんノルウェーではアトランティックサーモンというサケの養殖も盛んです。
で、上記のようにもともとマスとサケは同じで、ニジマスの大型品種を育てて出荷してくるのがシャケ弁や定食に使われるサケで、だから消費者庁もニジマス使用でもシャケといっていいといってるわけですが、これはもちろん釣り堀の30㎝のニジマスを塩漬けにして塩鮭としてシャケ弁にするやつはいない(見た目が全く違う)わけですので、養殖の大型のスチールヘッドの事を指しているわけですね。
以上のことは、銀ダラといってメルルーサを販売したり、カペリンをししゃもといったり、ティラピアをチカダイといってあたかも海水魚のように偽装したりするのとは違います。自分が一番酷いと思うのが「カジキマグロ」で、そんな魚はいませんし、カジキ(スズキ目カジキ亜目)とマグロ(サバ科マグロ属)は別種です。マグロのほうが高いのでカジキをカジキマグロとして販売しているわけ。真冬のマカジキとメカジキを別にするとカジキはみんな不味いです。でかいブルーマーリンとかハワイでは値段もつきません。日本で釣って食べても本当に美味しくない。燻製にするのがせいぜい。
こういうことですので、ネトウヨ脊髄反射で「さすが中国は偽装だ」というと無知を晒して恥をかきますので要注意です。中国人民は上記のことを知らないので騒いだのです。
たとえばこのスモークサーモンも、ロシア産紅鮭ですので、元はヒメマスです。www