たまたまTwitterで
米国人女性は自活能力があるからバンバン離婚するわけではなく、大卒女性の離婚率は高卒女性の半分程度しかなく、これが子供の貧困に直結し、人種間格差の一因にもなっている。もし米国女性の自活能力→バンバン離婚と思っているならドラマの見過ぎかゴシップの読み過ぎです。https://t.co/hrXvg1VaLc
— 畠山勝太/サルタック (@ShotaHatakeyama) 2019年4月20日
というのを見つけました。
「最近は自立する女が増えてるから離婚率が高い」「女は専業主婦やらせておけば離婚なんて言い出さない」みたいな老害がたくさんいるわけですが、アメリカでは全くの真逆らしい。
The link between a college education and a lasting marriage
学歴が高いほど結婚は長く続く。国立健康統計センターの研究者は2006年から2010年の間に初めて結婚した大学教育を受けた女性の78%が、結婚が少なくとも20年間続くと予想できると推定しています。しかし、高校以下の教育を受けている女性のはわずか40%・・・・・・・・。そしてなんと高学歴の女性の方が低学歴の女性より結婚する確率が高い。
そして
最初の結婚が長く続くのはアジア系の女性ですぐ離婚してしまうのがアフリカ系です。
日本はどうなのかと調べてみたら
でも、これはアメリカだからじゃないか。必ずそういう爺さんがいるでしょう。日本はどうなのか、調べてみました。その前にいつものようにプレジデントオンラインの記事。ww
高学歴リア充夫婦ほど5年以内に離婚する結婚の鬼門は”5年以内”と”20年後”
書いているのは大学の助教授のかたですが、「結婚して5年以内の離婚が統計的にも最も多いことが確認」というのはあるんですが、高学歴のリア充夫婦ほど離婚率が高いとかどこにもデータがない。ww これ、編集部で釣りタイトルを付けたんじゃないの。中身と全く違うじゃん。
で、ググったら出てきました。非常に面白いコホート分析を東大の社会科学研究所でやっていました。
女性学歴と離婚リスクの関連について -SSM2015 を利用した分析結果から
これが読んでみたらすっごく面白いの。まずは
1980年には学歴による離婚率の差はなかった!!
ということです。日本の大学進学率の推移は文科省のデータではこのようになっていて
1980年は昭和55年なのでこの表よりさらに左で大学進学者は3割程度の感じでした。高校出たら就職がもっとも多かった。だから逆に学歴といっても大卒自体が少なかったのであります。そのあと急に大学進学率が上がり、学歴の格差が広がりました。
この女性の学歴と離婚率については3つの分析論文があり、それをまとめる形なのがこの論文です。
まず、高い学歴の女性は学歴同類婚の傾向があるため、配偶者学歴も高くなる傾向があり、生活が安定するため離婚率が下がるという仮説です。
データでは1980年から2000 年にかけて中卒女性の離婚リスクが物凄く上がった。しかし
どんどんと、
女性は高学歴のほうが離婚しない
という風に変わってきています。中卒女性の圧倒的な離婚率・・・・・。というより離婚率の暴騰が恐ろしい。できちゃった婚で生活能力のないDQN男と結婚してすぐ離婚みたいな情景が浮かぶわけです。自戒の念を込めて言うと、10代の「好き好き、愛している」というのは単にサカリがついているだけだったと・・・ww
そして結婚したいと焦ってる方には朗報
日本の分析では,加藤(2005)がこれとは異なる結果を得ている。それによれば,20歳代半ばを基準とすると,女性が20歳未満,あるいは20歳代前半で結婚することは離婚ハザード率を有意に上昇させるものの,30歳以上で結婚した場合は,逆に離婚ハザード率が有意に低下する。この結果は,初婚年齢と離婚リスクとの間に負の関連が成立することを示している。これらの結果から,結婚年齢は離婚リスクに影響している可能性は高いと予想される。
20代前半未満で結婚するより30超えてからのほうが離婚しない
ということが明確にデータに出ています。焦る必要はない。
なので「最近の女性は教育水準が上がって権利主張をするようになって離婚率が上がった」というのはなんの根拠もなく、逆に「高学歴のほうが結婚時期も遅くなって見極めや常識ができて、この人と結婚してちゃんとやっていけるかをきちんと考えてから結婚」するようになり、離婚率も下がる。だから教育は大事だねということになります。
論文の中にもあるが、いまや中卒というのは日本では非常にレアな層になり、女性の喫煙率の平均が20~29歳で6.3%なのに中卒女性の喫煙率は5割近い。ただ、「学歴と貧乏は遺伝する」という福祉の鉄則があるため、社会福祉の面からも女性の教育って大事なのが分かる。10代で結婚して離婚して生活保護というパターンは本人にとっても可哀想だし、国にとっても大きな負担だしね・・・・。
なぜ高学歴女性のほうが離婚しないのか
論文は基本的にデータ分析なので、ここからは単なるわたしの想像です。
1 高学歴のほうが結婚年齢が遅くなるから
上のデータにもありましたが、結婚年齢が遅い方が離婚率は顕著に下がる。惚れた腫れただけでは結婚しないし、相手をよく見定める。結婚のメリットやデメリットも良く考えてから結婚するわけで、10代のできちゃった婚とは訳が違います。つまり「好き嫌い」だけで結婚しないで相性や永続性も考えるもんね。
2 配偶者も高学歴になって生活が安定する
高学歴の女性は高学歴の男性と結婚する確率が高く、経済的にも安定する可能性が高い。職業不詳、趣味は煽り運転のDV大好きDQNと結婚するのと比べたらそりゃ離婚率は下がるでしょう。
ですので、最初に戻り「女性が高学歴になって自立するようになったので離婚率が上がった」というデータはどこにもなく、逆に女性が高学歴になって学歴格差が開いたからではないか。そして底辺の層は底辺同士でくっついて簡単に離婚する。
十分な教育を受けた層と、まったくそうでない層では結婚に対する考え方も生活設計も異なるのです。昔は勤勉で努力家でも進学できない人が多かったが、現在では奨学金(返さないといけないのばっかりだが)もあるし、行こうと思えば行けるわけで、この時代にも教育を拒否するクラスタは、もう家庭環境からしてそんな感じなんだと思います。
しかし、こういうの書くと必ず「俺の友人は高学歴同士だが離婚した」みたいな「うちの婆さんはヘビースモーカーだったが80まで生きた」みたいな統計というものを全く理解しない人が出現する。高学歴同士だって離婚するだろうが、低学歴同士よりは顕著にリスクが下がるっていう話だから、ほんと、よく理解して欲しい。たぶんそういう風に言ってくる人の離婚リスクは高いぞ。
手塚治虫先生の作品はほぼ読んでると思ったけど本日のKindleセールでこれを見つけて買った。99円だもん。いまアニメ化したら絶対人気でる。