どうしてここ20年で情報格差(知的格差)が広がったのかを永江理論で解説します

2020年1月10日

日本では近年、貧富の差が大きくなったといわれています。内閣府のレポートを見ますと


日本では当初所得での格差はどんどん広がっているが、現実的には低所得者は減税、免税され、いろいろな手当がもらえたり生活保護のような再分配が行われているので、再分配後の格差はそれほど急上昇してはいない。日本の場合、低所得者の大半を占めるのは年金生活の高齢者なわけで、彼らに富の再分配が行われている証拠でもあります。証拠のデータ

高齢者は再分配後には格差は広がっていません、

が、世界的に見ると

再分配されても米英では拡大している。傾向値としては世界的に得格差が大きくなっているといっても良い。なんでこんなに差が広がるのかというと、大企業の陰謀だガー、我々は搾取されているガーの人たちもいますが、私の個人の意見としては「情報格差」が広がっているというのが大きな要因だと思う。

「情報格差」とは「知的格差」でもある。インターネットが本格的に我々の生活にはいってからまだ20年だが、情報を取得するのにこれほど楽なインフラはなく、インターネットを活用できる素養のある人とそうでない人では、明確に「情報格差→所得格差」が広がっていると思う。この場合の活用とは「単にネット接続できる環境がある」ではなく、本筋で活用できるということ。スマホさえ持っていれば接続はできるが、情報収集にどれだけの人がスマホを利用しているかというと実はそれほど多くない。

ニュースサイトを見ているのは若年層と60歳以上では半数程度しかおらず、若年層は新聞も雑誌も読んでないわけだからこれじゃ無知が進むわけだ。動画の利用の方が7割弱とよほど多い。しかし、この調査、どうして「検索」っていう項目がないのかね。一番知りたいのに。

前置き長くなりました。ここからが本題です。ではどうして「情報取得格差」が広がったのかってことを永江理論で説明します。

いろいろなメディアや情報リソースの本質

新聞の総発行部数は新聞発行協会によると2000年の7189万部から4622万部まで減少した。減少率30%。1世帯あたりの部数でいうと、1.13から0.66だからほぼ半減したと言っても良い。いまや購読者は全年代で30%程度しかいない。そしてほぼ50代以上。10代にいたっては5%もいない。

全国出版協会のデータでは書籍や雑誌もこんな感じで読者が激減している。

ここからが永江理論です。永江理論では情報リソースをプッシュ型とプル型に分けます

プッシュ型・・・向こうから来る
プル型・・・・・自分で取りに行く

と定義します。プッシュ型の典型がテレビで、電源入れておけば勝手に流れていて興味のあるものだけを見る仕組みです。もちろんテレビにもプル的な要素はあり、典型的なのは災害時のリアルタイムの報道ですが、一般的にはプッシュ型のほうが多いですよね。ラジオも同じです。

プル型の典型は、新聞や雑誌などのテキストメディアで、これは「自分から読みにいく」という行動を起こさないと向こうから来てくれません。6年も前に書いてますが

新聞はどうして売れなくなったかをキャズム理論で説くとすぐわかる


ネット以前はほホワイトカラーの家庭ではたいてい新聞をとっていて、お父さんがインフルエンサーの役割を果たしていました。新聞を読んだお父さんが時事問題の解説を家族に対して行う感じです。そしてお父さんが読み終えた新聞や雑誌がちゃぶ台に置いてあって、子供がそれをあとで読むという感じです。ここでは新聞にも「プッシュ型の機能」が少しですがありました。三面が開きっぱなしで見出しが目に飛び込んでくるとか・・・・・

整理するとこんな感じです。

ブッシュ型は自分から探さずに勝手に届けられる情報です。YouTubeなどの動画もチャンネル登録して見たい動画を探す場合は別として、ぼーっと見ているとオススメが出てくるのでまたぼーっとそれをということでプッシュ型に類別しました。

LINEはプッシュ通知のアプリですが、聞けば若年層が一番見ているがLINEニュースだそう。しかしLINEニュースの内容は

芸能系が半分くらいを占め、これがニュースなのかよという気がします。ひとつあたりのテキストも非常に短く、これで「ニュースを見てる」とかいわれてもなあ・・・・。

「噂」というのもプッシュ型の典型です。いわゆる小耳に挟んだっていうやつ。

このプッシュ型しか受け取らない層の多くは、はっきりいえばどんどんアホになり、情報に疎くなり、競争に負け、格差社会の下の方に沈んでいくわけです。キャッシュレス決済で5%還元なにそれ、みたいな人は年間に何十万も損してる可能性があるわけだよね。

逆にプル型としては

従来メディアの新聞や雑誌、本などに加え、「検索」というネット行動があります。そう、ネット行動はプル型とプッシュ型の両方の側面があるのです。「ネットサーフ」もそもそもプル型ですが、YouTubeのオススメを1日見たりはどちらかというとプッシュ。TikTokはプッシュ型でTwitterはプル型。SNSはプルとプッシュの両側面があるので分類してません。ネット以前の会合やパーティも同じ。どんどん話しかける人と、受け身の人では会合に出席してもまったくはいってくる情報量が違うでしょ。

で、こう考えると
若年層と高齢層はプッシュ型に依存しがち

ということがわかりますよね。だからGoogle神は「子供向けのYouTuberばかり増えて危険だ。子供向け広告を配信しないようにして子供向け動画を成り立たなくして減らそう」と考えたのではないか。

広告の話でいうと、新聞、雑誌の広告はどっと減ってネットに移行したが、実はテレビは減っていない。というのはプッシュ型に依存する人たちにリーチするにはネット広告では届かないから。テレビは永遠に残ります。プッシュを待っているだけの情報弱者のために。

プル型は伝達速度の速いテキストに依存する

で、ここで思いついたのは実はこの事実です。


こうツイートしたら賛同者多数。リプを参照してください。

やはり同じような人がたくさんいた。自分は人が喋るだけの動画、特に前置きが長いものは全く見ない。伝達速度が遅すぎて苦痛です。体感的にはテキストの10倍くらいの時間がかかる。光の時代になにモデムでやってんの的な・・・・・。
大学の講義も教授がしゃべるだけのは全く苦痛だった。欧米の大学の授業はディベート式で進められることが多いというが、日本は江戸時代から先生の講義を黙って聞く「座学」が主体。自分の一番苦手なタイプです。

しかしいま、YouTubeでは単に喋るタイプのものが多数あり、相当数の人たちがそれを見ている。信じられない。おそらくこうしたことに耐えられる人たちは、テキストに親和性がなく、人間が喋る低速度のほうがはいってくるのかもしれない。また


このツイートも「同感」で溢れました。

「それでも自分は動画で充分」というなら個々の人生は個々で決めるものですからそれでいいのですが、子供のうちから動画漬けにするのはどうなのよと。そして仕事ができる人というのはおしなべてテキストを読んで理解する速度も速い。テキスト読む速度が速くて損することはなにひとつない。要は集中して本を読んでいるかどうかに集約されてしまうのだが、「本は読まない」と回答する大学生がこんなになっちゃって、

大学生「読書時間ゼロ」半数超 実態調査で初

この調査は「第53回学生生活実態調査」。大学生の1日の読書時間は平均23.6分。ゼロと答えた学生は53.1%で、昨年より4.0ポイント上昇。文系が48.6%、理系が54.5%だった。

ニッポンどうするのよ、と。まあ中国でも4割の大学生は本を読まないらしいから、本を読む習慣があるだけで他人と差別化できて戦闘力がアップするのに馬鹿だよねと思う次第です。

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