本日は月曜日なのでスピリッツ買った人の多くは目が点になったと思う。実はずっと昔、インターネットの黎明期にスピリッツにミニコラムを連載していたこともあり、非常に親近感があった私ではございますが、大炎上となっている様子には微妙な違和感を持ってる。というのはこれは「正義感と正義感の戦い」だからだ。原作者の雁屋氏も正義感で自分の身はどうなってもと思ってやっていることだし、逆に「これはヒドイ」と言ってる人たちも正義感だ。金儲けのために対放射線サプリを売るような「悪」と戦うならまだしも、正義と正義の戦いだからたちが悪い。アルカイダ VS アメリカみたいなもんだ。
さて、美味しんぼの原作者の雁屋さんはオーストラリア在住である。私の知っていた時代は日本に取材専門のライターが複数いて、雁屋さんの指示で取材したり作画用の写真を撮って漫画家に渡していたが今は知らない。たぶん体制は変わってないんじゃ無いかな。で、本日出るスピリッツだが
【速報】早売りスピリッツを買ってきた人曰く「完全にアウト」らしい【美味しんぼ】
に早刷りの写真が。まんま著作権侵害だがとりあえず国民の知る権利もあるのでここは勝手に許す。問題なのが今回のメインが双葉町前町長の井戸川という人であることだ。
この人について書くと誹謗中傷になりそうで怖いので、まずは参院選に立候補した時の演説の動画を見てください
3分40秒くらいから・・・・。
「2011年、津波のあった年の3月3日。3月3日に地震、津波のあることを日本政府は知ってました。知ってたんですよ。8日前に・・・地震・津波の8日前に知ってました。しかし、それを止めたのは、政府と東京電力と、東北電力と日本原電が発表を止めてしまったのです。こんなことって許されますか、みなさん。」
と、はっきり言ってます。誹謗中傷にならないように井戸川氏を語るのは難しいのですが、ごく平均的な見方で「脳内妄想」の領域だと言ってもよろしいのではと思います。だいたい3月3日に知ってたら福一は予備電源確保してますがな・・。
さらに漫画の中では「電源喪失は3月11日の15時36分で冷却ができなくなった」というように井戸川さんは話しているのだが、間違ってます。津波が福一の敷地に侵入したのは
http://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Article/394/854/H25-2_syoga.pdf
によるときっかり15時36分です。正確に言うと15時35分59秒~36分59秒
いくらなんでも津波が敷地に侵入した瞬間、つまり建物までも到着していないのに電源も落ちて、さらに直流予備電源も落ちて冷却不能になったという説は時系列的にめちゃくちゃです。
だいたい粘膜細胞内の水分子が放射線で切断、過酸化水素に変わって鼻粘膜を損傷させたのが鼻血の原因なら、脳梗塞で亡くなった方も大量に出てるはずでしょ。脳内で出血しちゃうし!!
放射能の影響で巨大イカっていうのもありましたね。信じてる人もいましたね。アホか。
昨日のエントリーにも書きましたが、情報を収集するにあたっては、セカンドオピニオン(というかセカンドソースね)をきちんと取るのがジャーナリストなら当たり前です。新聞記者なら、賛成と反対からちゃんと聞く。「美味しんぼ」の原作者か取材スタッフはジャーナリストではないのでこの手法を採らなかった。しかも出てきたデータの時間軸もきちんと確認してないし取材対象がどういう評判なのかも調べてないと思う。自分ならあの動画見たら取材しない。漫画の原作ならこれでいいのだが、ジャーナリスティックな問題を扱うのに同じ手法ではだめだと言うこと。たくさんの人の心を傷つけ、復興を妨げるわけだから。
さらには瓦礫の焼却で健康被害が出たと「誰かわからないお母さん達」に聞いた話まで出てくるようで、これはもう・・・。放射脳の母親に「瓦礫の煙が危険だ」と毎日聞かされたらどんな子供でも体調崩すわ。しかも大阪の瓦礫には福島のは持ち込まれていないそうでこれはもう東北全体に対する誹謗・・
小学館はこの前に「鼻血や疲労感が放射能の影響によるものと断定する意図は無く」とリリースしているんだが、その後に出た内容は「完全に断定」。これってどうなのか、まさかあとで「放射脳」と差し替えるんじゃ無いだろうなと・・・
まあ、一方的なソースだけを信じてしまうというのは普通の人もよくやることで、完全滅菌された工場で作られたパンと自分ちの雑菌一杯の台所で作ったパンを比較し「全然カビないのは保存料が入ってるからだ、悪だ」というのを信じて騒ぐのも似たようなもんですから、ホント。
↓この本。放射脳と貧困ビジネスを結び付ける発想は自分には無かった。でも言われたら非常にごもっとも。悔しいのでお布施代わりに買ってみた
放射脳カルトは放射能汚染の不安を煽り、怪しげなベクレル・フリーの食材やガイガーカウンターを売り付ける。脱法ハーブ(脱法ドラッグ)店がガイガーカウンターを販売するケースもある。ゼロゼロ物件業者が自主避難者を劣悪なゼロゼロ物件に住まわせる。宅地建物取引業法違反で東京都から業務停止処分を受けたゼロゼロ物件業者が避難者の受け入れを表明したことに対して、「偽善業者」「避難者もカモにする」と批判された。フィリピンなどへの自主避難(放射能疎開)支援と称して人身売買を行う。放射脳カルトにも貧困ビジネスにも正義はない。放射脳カルトは脱原発運動の市民的支持を失わせる。