本の自炊論議が燃えさかっている。
疎い方のために簡単にいうと、自炊っていうのは買った本をバラバラに裁断してスキャナーで読み込み、PDF形式にしてiTunesなどに読み込んで、iPadやiPhoneなどの端末で読むことだ。電子書籍の自作なので自炊という。
今回の件とは関係ないが、家電製品や時計などを買った場合、説明書を保存しておくのは大変だし場所を食う。だいたいデジカメの説明書なんていちいち持って歩けない。なので自分は何か買ったらメーカーのサイトからPDFファイルの取扱説明書をまっさきにダウンロードして紙の説明書は捨てている。iTunesでこのファイルを読み込んでiPhoneと同期をかけるとiBooksの中に出てくるのでいつでもiPhoneで説明書が読める。デジカメもスマホもテレビもIndesignも、みんな説明書はiTunes、iPhone、iPadの中だ。現物はぽいぽいと処分。机もすっきりして幸せなのだ。
pdf化は、本がたくさんある人にとっては重い本棚とさよならすることが最大のメリットになる。地震の心配も無くなるし、なにより部屋が広くなる。そして「あの本はどこだったかな〜」と探す手間も省ける。引っ越し費用も安くなる。
↑ これ、本当の自炊ですのでただの冗談です
問題は、自分で自分の本をぶった切って加工している分にはよいのだが、これを専門に受託で行う業者が出てきて、めちゃくちゃ流行ってるらしいということ。さらにはこれが著作権を侵害しているのではないかということだ。また、裁断した本を転売している業者がいたり、pdf化されたものがコピーされて出回ったりも当然あるだろうから、著者や出版社にとっては怒り心頭だろう。
自炊についての弁護士による法律のわかりやすい解釈はこちらでどうぞ
法律的には自炊を請け負うことは違法ということになるだろう。だいたい自分でやるなら自炊だが、第三者に頼んじゃったら他炊(?)なんですけど。定食屋で飯食ったら自炊じゃないでしょうよ。
で、12月20日、作家の東野圭吾、作家の浅田次郎、大沢在昌、林真理子、漫画家の弘兼憲史、永井豪、漫画原作者の武論尊の七氏が自炊業者を相手取り、差し止めを求める裁判を東京地裁に起こした。これを津田大介氏が批判したりして、まさにしっちゃかめっちゃか。→ 詳細
値引き販売を許さないという規制が、本だけは独占禁止法で除外されている。それはつまり「文化を守る」というスタンスなわけで、出版業界はそれにいままで守られてきた。しかしいまや青息吐息、虫の息。作家だって同様である。生き残るためには何でもしたいんだろうが、あいにく電子書籍化にはコストもかかるし、どこが主流になるかもわからないでおたおたしているという感じじゃないだろうか。
だったら、こうしちゃったらどうでしょう
発想を転換して出版が自炊(他炊??)を受けるわけですよ。
1 pdf化したい人は本を買った出版社に送る
2 出版社はpdfデータを安価で渡す。
すでにユーザーは本を買っているので、ここでは著作権料は取らない。本が古すぎてpdfデータがなければスキャンしてpdfにしてメールで納品。自社の余ってる人材でやってもいいし、自炊業者に外注してもいい。人気本は一回スキャンしたら次々使えるからスキャン不要になる。裁断した本は、基本的に出版社で廃棄処分。
新刊を買ったら、アマゾンから直送で出版社に送り、そのままスキャンして出版社がpdf納品するサービスも開始。
※スキャン手数料ビジネスをスタートできる
※中古本がどんどんこの世界から消えていくので中古本再版ビジネスに打撃を与えられる
3 pdfにはなんらかのライセンス管理を行い、基本的には一つ目は無料だが、二次利用にはあらたなライセンスキーが必要になるようにし、Web上でカードでライセンスを買えるようにする。このライセンスキーについては著者に一定比率をバック。
ライセンスキーがないと開けないようにするのはそれほど難しくないはずだ。普通に他でやってますからね。ライセンス管理のサイトがいりますが、それくらいは投資してください。
これで本箱から本が減っていき、ユーザーは喜ぶ。新しい本を買っても部屋が狭くならないのでどんどん買う。出版社は本が売れるし自炊(他炊?)したデータやばらされた本が出回らないので良い。スキャン業者は正当な仕事になるからびくびくしないで済む。著者は二次利用の時の著作権料が入る。世界は平和になります。
ビューワーの開発や、本のデータのテキストからの電子書籍化などの開発コストはかなりかかるが、この原始的な仕組みならすぐにでも始められる。大手出版社は無理でしょうから、まずはビジネス書籍や専門書の出版社あたりからどうでしょうか。
そもそもこうしたサービスを受けるユーザーは、本を大量に所有するヘビーユーザー。出費はそれほど気にしない。ユーザー数は少ないが、一人で所有する量が半端ないのでワントゥワンマーティングで言う、三角形の頂点に位置する層だ。マーケティング的にはこの層を押さえればほぼ80〜90%は押さえられるはずだから、検討してもバチは当たらないと思いますよ。