世界中が物凄いことになっているが、自分の感想をひと言で言うと
「イギリスでEU離脱に投票した貧困層と高齢者層は「とにかく今がイヤ」という感情論だったのは間違いない。いまがイヤだから昔に戻ればなんとかなる的な。今がイヤだからどうとでもなれ。ただし今回は他を巻きぞえにするので自殺ではなくて心中」
って感じかなぁ・・・
イギリスの投票結果だと
こんな感じで、実際には移民が集中して家賃が上がって病院が大混雑のはずのロンドンが離脱大反対。逆に移民もこないような周辺地域の住民で離脱賛成です。
日本ではたいして注目されていなかった英国民投票の結果が市場で大混乱を巻き起こしたことに対し、めいろまさんの「イギリスがEU離脱した理由」がわかりやすいと大拡散されていて驚いた。内容はいつものめいろま節だけど、「離脱に投票した一般人はポピュリストの情報操作によって、記事の内容を信じこまされている」というポイントが完全に欠けている。この記事を読んで「そりゃあ、これだと移民は嫌だと言うイギリス人の気持ちがわかる」というコメントが溢れていて仰天した、この「説明のわかりやすさ」が元凶だと言うのに。
というのは、わたしも感じました。このブログにもあるように、社会の停滞をすべてを難民のせいにしているが、病院が大混雑しているのは本当に難民のせいなのか。働き盛りの世代の難民がそんなに病院に行くかっていえばそのとおりで、高齢化が最大要因なのはおそらく正しいでしょう。だいたい6000万の人口の国に30万人やってきて病院が急にパンクっておかしいと思いません?
離脱票が最も多かったのは移民が最も少なかった地域であり、残留票が多かったのは移民が最も多かった地域で、高齢者でも大卒は離脱反対が多く、地方の低学歴ワーキングクラス(労働者階層)・ミドルクラス(中間層)が「悪いのは難民だー」という扇動を丸呑みしまったという感じらしい。トランプの支持層と同じだ。
この記事は面白い。図版を借りると世代間格差が浮き彫りです。
若者は完全に残留派で、高齢者ほど離脱支持。この記事にある
フィナンシャル・タイムズが過去50年間の80万世帯所得を分析した記事によると、過去35年にわたって年金受給者の所得が上がり、平均的な20代の所得は、全人口の50%を下回ってきた。インフレや失業問題にもかかわらず1960〜70年代には、20〜25歳の平均的な所得は全体の人口の60%より上だった。だが2012〜13年、それは37%に落ち込んだ。その要因は高齢者だ。かつて全人口の75%より低かった65-70歳の所得は、いまやトップ40%に上昇している。
っていうのはまるで日本そっくり。高齢者に富が集中し、若者は貧困にあえぐ。若者にとっては垣根のないEU圏内で自由に行き来できるということは、好きな学校や職業を選べるということであり、今回の離脱でそれができなくなった。イギリスという狭い地域に押し込められ、他の国に渡るときは海外渡航になるし、気軽に居住もできない。スコットランドが英連邦から離脱すれば、さらに狭い地域に押し込められることになる。
自宅に引っ込んで暮らす高齢者はこれでいいかもしれないが、いったん自由の味を体験して、これからどこの国で学んだり働いたりしようかと夢を持っていた若者にしたら「目の前が真っ暗」である。「USBの分からない人たちに自分の将来を踏みにじられた」と感じるのもわかる。
短期的には大きな経済的損失だが、長期的にはたいした影響がないとか書いてるエコノミストの記事が東洋経済に出てましたけど、全く人の気持ちがわかってない。経済というのは「モチベーション」だと思う。「これから良くなる」と思えばみんな必死に働くから景気も良くなるが、「先行きが真っ暗」と思えば労働意欲も下がって経済は回らない。アベノミクスが一時的なのはまさしくこれだと思うんですよ。金利操作するより「これからどんどん労働環境が良くなる」「頑張れば賃金が上がる(自動じゃなく)」「起業がカンタンになる」という仕組みを作った方が経済は活発化すると思うんですよ。
で、イギリスだが、これからの将来を担う45歳以下の層が絶望し、なんで自分たちが搾取されて将来を潰してくれた老人の年金を払うんだになっているわけで、将来的にEUの別の国に移住や国籍を移す人が多くなるでしょう。特に高学歴層がそういう行動を採るのがトレンドになれば、イギリスは爺さん婆さんと貧困者ばかりになり、経済が終息に向かうのは自明の理だと思います。
大阪市の住民投票がデジャブなくらい似ている
以前に書いたエントリーです。
過去3年の大阪市役所の逮捕者総数57名!!!大阪市民以外は大阪市をどう見ているか
大阪市をなくして大阪府と統合するという住民投票は、反対多数で廃案になったわけですが
イギリスと同じく地域によって明確に差が出ました。
低所得者層が多い地域は反対が多いという類似点。リンク先の記事は消えているが、年代別にみると、とくに賛成した人が多かったのは20代(61%)と30代(65%)。40代(59%)、50代(54%)、60代(52%)も賛成が過半数を占めた一方、70歳以上は反対が61%(朝日新聞発表データ)と、完全に高齢者の反対で葬り去られたわけです。
で、もうひとつの類似点は
徹底的に反対したのは共産と民主と公明党支持層。自民も維新にやられていたので法案に反対運動したが、支持層に現実派が多いせいかこの結果。
ポピュリストの扇動にやられた
っていう感じがクリソツです。こういうこと書くとすぐに差別とか偉そうと言われるのですが、高齢者層や低学歴ワーキングクラス(労働者階層)はどうしても情報収集能力が低い。どれだけニュースや新聞や市役所の広報誌に書いても、そもそも読もう、理解しようという気持ちが薄いので「説明が十分にされてない」「よく分からない」になってしまう。いまだにオレオレ詐欺とか情報商材に引っかかっちゃう層ですよ。
こういう人たちには、イギリスなら「移民が悪い」というシンプルなプロパガンダが効果的だったし、大阪市なら「いままでもできてたやん」「大阪都になったらサービス低下するし」「無料パスとかももらえなくなるしな」みたいな目の前の損得をぶら下げられると操作されやすいわけです。無駄を無くすとどんな将来になるかとか、だいたい自分が生きてるかどうかもわからない未来の話をされても全く共鳴しないわけ。一番割食うのは若くてやる気のある世代です。
だいたいですね。EU離脱するかどうかなんて、経済と外交の素人の国民に決定させること自体が間違ってる。「税金を全部無くす」法案を国民投票で決めたら、日本だって通っちゃうよ。まともな人は「それではやっていけない」って反対票を投じるけど、「埋蔵金があるから平気」「大企業から搾り取れば税金は要らない」ってポピュリストが扇動すれば、大多数の国民は信じてしまう。忍耐や犠牲を伴う案件を国民投票で決めるには、スイスみたいに人口が少なくて小さいうちから徹底して教育されていないと無理だと思います。
とりあえず本日はこれを読んでいます。イギリスの離脱を予言したという人の・・・