本日は参院選ですが、すでに期日前投票した自分は締め切りの午後8時まで関係ない人です。
さて、
高速道路の逆走増加 7割が高齢者 合流部、方向確認を
東京新聞
逆走車両の運転手のうち68%が六十五歳以上の高齢者で、認知症の疑いがあった人は全体の9%にすぎなかった。「高速道路が一方通行だと知っているのに、進路を間違えたからと、あわてて逆走するケースが多い」(同社)。高速道路を走っているとの認識がなく、一般道だと勘違いしていた場合もあるという。
高速道路を走ってるという認識が無い時点で認知症のような気がするのだが・・・
YoiuTubeで「逆走」で検索すると、ドライブレコーダーで撮影した恐ろしいのがや山ほど出てきます。
ただしいまの80代で免許を持っている人は、仕事で取得したか、それとも裕福だったかどちらかで、男性が大半。60年前とか車がある家庭とかめちゃ大金持ちだったから。しかしその後、バブル期に一気に取得者が増えた。
と、70代で運転免許持ってる人は3割くらいしかいないが、60代になると一気に増えて7割になる。
統計局のデータ見ますと
80〜84歳の免許取得者のうち、女性は5人に1人しかいない。先日のブログにも書いたけど、80歳を超えると女性の認知症率は男性を大きく上回り、3人に1人が発症してしまう。いまの80代運転者は女性は20%だけども、あと20年したらいまの60〜64歳の免許所有者の女性比率は44.9%だから、80代ドライバーの女性比率が跳ね上がります。ただ女性は頑固爺と違って運転するなといわれたら言うこと聞くかもしれないけど・・・
繰り返すけど、年数が経過すると認知症の疑いがあるドライバーが運転する車が日本中をわんさか走り回ることになります。自動停止装置や自動運転の技術は確立されていると思うが、高齢者って古い車に乗り続けてる人、多いでしょう?
いったいどうなっちゃうんでしょうね。
海外旅行でテロに遭う確率と、日本にいて認知症老人の運転する車に轢かれる確率はどっちが高いか
ふと、思い立ちまして、東大で疫学の准教授やってる五十嵐中くんに計算してもらいました。実は彼のお父上は、日本で最初のイスラム原理主義者のテロにあって亡くなられた悪魔の詩訳者殺人事件の被害者なのです。
医療統計の専門家なので本気の統計です。「××は食べてはいけない」みたいなエセ科学を統計的にばっさりやっつける専門家です。以下は彼からの力作レポート・・・
◎ここから
永江 一石 (一石永江)サンから唐突に降ってきた課題。
「海外旅行でテロに遭う確率と、認知症の高齢者が運転する車で事故に遭う確率、どちらが低大きい?」
「正しく怖がる(が、怖がろうとしても寿命が先に尽きてしまう)食品」シリーズもそろそろ怖がり尽くした感があるので、疫学の復習として自らチャレンジ。
まずは、立場を決める。お題と私の直感からは、「一見テロの方が怖そうだが、実は交通事故の方が危険」という結末がなんとなく見えた。なので、できるだけ慎重な仮定をおくために、「海外テロは甘め(確率高め)、交通事故は辛め(確率低め)」の前提をおくことにする。「甘く見積もった海外テロ確率<辛く見積もった交通事故確率ならば、結論の信頼性は高まる」という発想。
1 まずは海外でテロに遭う確率を解析
では、数字を集めてみよう。
海外テロについては、外務省に数字がありそうだ。外務省の「海外邦人援護統計」に、在外公館が海外の邦人に対して「援護を実施した」事案がまとまっている。
http://www.anzen.mofa.go.jp/anzen_i…
「事故・災害」の項の「戦闘・暴動・クーデタ−」、それに「犯罪」の項の「テロ」について、死亡・負傷を2005-2014の10年分拾ってみた。結果、死亡が15名・負傷が20名。期間中の全死亡者は5,575名、負傷者は5,535名なので、テロによる死亡が占める割合は低い。
死亡者と負傷者の数がほとんど同じなのは一見妙だが、これは軽傷者 (在外公館に助けを求める必要がなかった軽傷者)が除外されているためで、実際の負傷者数はもっと多くなるだろう。ただ、原因がテロやクーデターであれば、単なる強盗よりも在外公館が介入する確率は当然高くなるはずなので、「テロ関連死亡15名・テロ関連負傷20名」はかなり信頼性が高いデータと考えられる。10年間の渡航者は、のべ1億7,000万人。このうちの20人・15人のみでは、確率は極めて小さくなる。そこで、テロの危険性を高く見積もるために以下の調整を加えた。
1) 死亡・負傷だけでなく、「その他」を組み込む
「戦闘・暴動・クーデター」も、「テロ」も、死亡と負傷のほかに「その他○名」の項目がある。「その他」は、細かい記述を見ると「クーデターで空港が閉鎖されて足止めを食らった」「政情不安で国外にいったん避難した」ような人が多く含まれる。肉体的なケガはないが、「テロのせいで『痛い思い』をした」と考えられなくもない。「その他」の延べ人数は、10年間で999人。これをテロの間接的な被害者としてカウントしよう。
2) 2015年・2016年の死亡者データを追加
統計が揃っているのは2014年までだが、2015年のイラク人質事件・チュニジア博物館銃乱射事件、さらに今年のダッカ事件を計算に含めた。分母に相当する海外渡航者の人数は、法務省の出入国管理統計から2016年6月末までの数値を採用した。 (2015年1,621万人、2016年半年間で762万人)
以上をまとめると、2005年から2016年7月までに、海外で何らかの形で被害に遭った邦人の総数は1,064人。期間内の海外渡航者の総数は、1億9,400万人。そのまま割り算してもアバウトな値は算出できるが、「1泊2日の弾丸ツアー」と「6ヶ月間のワーキングホリデー」では、事件に遭う確率は違ってくるだろう。本来は慣れその他の要素を考慮する必要があるが、ここでは純粋に「海外に滞在した日数」を採用することにした。日本旅行業協会の「海外旅行に関する調査」によると、1回の海外旅行での平均滞在日数は9.4日。
http://www.jata-net.or.jp/vwc/pdf/0…
日本から滞在先空港に着陸するまでの時間がある程度かかるはずなので、平均9日間とすると、1億9,400万人×9日=17億4,600万「人・日」が、海外でリスクにさらされる総時間数となる。
本来は駐在者(すなわち、365日海外にいる人)も含まれるため、人・日はもっと大きくなるはずだが、ここでも危険性を高く見積もるために、全員が短期滞在者と仮定して計算を行った。(分母が小さければ小さいほど、1人1日あたりのリスクは上昇する)
17.5億「人日」で、1,064件の事件が発生している。それゆえ、1人1日あたりのリスクは1064÷17.5億。少々値が小さくなりすぎるので、「10万人日あたり」に直すと、0.0609となる。1,000万「人・日」で6.09人だから、「100万人が10日間の海外旅行をすると、およそ6人が1回テロに遭遇する」という値だ。
2 続いて交通事故のデータを分析
続いて、認知症の高齢者の推計に移る。
基本方針は、「けが人・死者が発生した交通事故の件数」×「うち、高齢者が運転している割合」×「うち、認知症の高齢者の割合」で件数を求める。
私自身はペーパードライバーですらない交通弱者 (持っている免許は、薬剤師と旅行管理者くらい)なので、交通関連の法規には正直疎い。単純に交通事故の件数をベースにすると、車単独の物損事故や運転者本人のみが負傷した事故も入ってしまい、過大推計になる。そこで、「他人を傷つけた」可能性が高そうな「自動車運転過失致死傷に問われた事例」をベースに、推計を試みた。平成27年犯罪白書 (法務省)によれば、平成26年の危険運転致死傷の検挙人数は462人、自動車運転過失致死傷等の検挙人数は566,976人。合わせて570,139人。刑法犯の検挙総数819,136人のうち、実に7割近く (69.3%)を自動車事故がらみが占める計算だ。
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/62/nfm…
56万人のうち、高齢者が検挙された件数がわかればよいが、残念ながら自動車事故関連については年齢別の集計データが得られなかった。
代用できそうな数値として、警察庁交通局「平成27年における交通事故の発生状況」に、第一当事者 (最も責任の重い者)の年齢別の事故件数が見つかった。人対車両の事故48,835件のうち、65歳以上の高齢者が第一当事者だったものは12,006件 (24.6%)。なお免許保有者数でみると、高齢者の占める割合は20.8%なので、高齢者が事故を起こす確率は30-50代と比較してやや高いといえる。
65歳以上を5歳刻みに分けて、第一当事者件数で按分すると、65-69歳が56,845件〜85歳以上が4,903件、合計で140,168件となる。
続いて、認知症の有病率をかけ算しよう。IKEJIMA (2012)らが、全国3,394人に対して実施した認知症の有病率調査によれば、65歳から5歳刻みの認知症の有病率は5.8% (65-69)・5.8% (70-74)・15% (75-79)・20% (80-84)・40% (85-89)。この値を先ほどの件数に掛け合わせれば、認知症高齢者の検挙件数が算出できそうだ。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/…
ただし、そのままかけ算することはやや危険でもある。認知症が重症化すれば、そうでないものと比較して運転を続けられる可能性は低い。すると、「運転を続けられる」高齢者の中での認知症の有病率は、通常の高齢者のそれよりも低い可能性がある。上村らの「認知症と自動車運転 (日本臨床内科医会誌, 2016) 」によれば、認知症の高齢者13名のうち5名 (38.5%)は、道路交通法の改正 (医師が公安委員会に通報できる)以降も運転を継続していた。やや症例数が少ないもののこの数字を援用し、Ikejimaらの有病率に0.385をかけ算して「運転継続者の中での認知症有病率」と設定した。
かけ算した結果を図<認知症高齢者が第一当事者となる事故件数>に示す。事故件数の推計結果は、65歳以上全体で5,361件となった。
なお、認知症の高齢者は通常の高齢者に比べて、事故を起こす可能性が高くなることも考えられる。しかし今回は控えめな推計を行うこと、また認知機能と事故を起こす可能性に関しては複数の論文で異なる結論が出ていることから、認知症そのものにともなう事故率の増加は推計に含めていない。
5,361件が分子で、分母はどうなるか。先ほどの17億「人日」に相当するのは、「1億2,500万人が365日間」とみなせる。これを計算すると、456.2億「人日」。5,361を456.2億で割って、先ほどと同じように10万「人日」に直すと、0.012となった。100万人が10日間暮らすと、1.2人が交通事故に遭う計算である。
さて、最後の「どちらが危険か?」の評価である。同じ10万「人日」に揃えたときに、テロに遭うのは0.0609、交通事故は0.012だった。ならば、テロの方が5倍危険…と結論できそうだが、最後に落とし穴がある。1年365日をならして考えたとき、海外に出ている日数と日本で普通に生活している日数、どちらが多いだろうか?「ふつう」の人であれば、海外日数<<国内日数になるはずだ。
例えば年にのべ1ヶ月間海外に出ていたとしても、残りの11ヶ月国内にいたとすれば、海外で30人日×0.0609、国内で330人日×0.012で、年間を通してみれば国内の交通事故リスクが上回る。大ざっぱに言って年間の海外滞在日数が60日以下であれば(長期滞在者を除けばほとんどの人がこの条件を満たすだろうが)、テロのリスクを相当高めに見積もっても「1年間にテロに遭遇する確率」<「1年間に認知症高齢者が原因の交通事故に遭う確率」になろう。
むろん、この大小比較をもって「テロ対策を軽んじろ」と主張するつもりは毛頭ない。むしろ、認知症対策を「同じくらい」重要な政策にすべきと、双方の当事者としては強く主張していきたい。
◎ここまで
現在のところ、テロの確率を相当に高く見積もっても、日本で認知症の高齢者の運転する車に轢かれる確率のほうがはるかに高い!!
しかもこれは過去のデータの分析であって、今後80代以上の免許所有率が数倍に跳ね上がり、高齢女性の運転率も同様に跳ね上がることを考えると、かなり恐ろしい世界がやってくるというわけです。
もちろんだからとって「テロ対策より高齢者ドライバー対策」というのは別の次元なので同等に扱うべきではないが、
テロが怖くて海外旅行にいけなーい
なら、近所のコンビニまで買い物に行く方がよほど危険っていう確率計算結果を示して本日は終了です。
五十嵐君の近著です。医学統計に興味ある方はぜひ
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わかってきたかも「医療統計」…だけど論文読めません!!
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