この質問は実は有料メルマガでいただいたのですが、あまりにも多岐にわたるため、ブログで回答させていただくことにしました。
ネットショップを将来やりたい、いま、小規模だけどやっているという方にはお役に立つかもしれません。
【いただいた質問】
ヤフオクとイーストアとアマゾンに少し出しましたが前者はアクセス少なすぎ、後者は少ししか売れない、楽天は怖くてまだ出してない、という状況です。ネット通販はビジネスになるのか、それともネットは儲からない、という結論で終わるのか、現実を知りたいです。
【わたしの回答】
Yahoo!ショッピングと楽天の比較ならいざ知らず、イーストアと楽天は車でもセダンとミニバン、ガソリン車と電気自動車くらい違うので同じ土俵では比較できません。素人さんにも分かるようにかいつまんで簡単にまとめてみます。あくまでざっくりなので詳細はご自分で勉強してください。
ネット販売の仕組みを大別するとこんな感じになります。あくまでも大別ですので例外はたくさんあるわけですが・・・
【1】モール出店・・楽天とかYahoo!ショッピング
これはもうご存じだと思いますが、楽天の場合だと毎月のシステム利用料と売り上げからのマージンが徴収されます。これがかなり高い。鵜飼いの鵜みたい。
【2】ASPサービスを利用
多くのケースでは月間費用のみが徴収されます。
a) 買い物かごだけを借りる
自分でCSSとhtmlでサイトを作って買い物かごだけを貼るもの
b) サーバごと借りる
サイト全体を管理画面から作るタイプ
【3】オリジナルショップ構築
構築費用とサーバ代がかかります。
a) CMSのブラグイン利用
WordPress、Movable Typeなどのプラグインを使用します
b) オープンソースのEC-CUBEなどをベースに構築
C) ゼロから構築
では、これらのメリット、デメリットを挙げてみます。
【モールのメリット、デメリット】
モールの代表として楽天で説明します。楽天はネットショップ構築とは意味合いが違います。買い物する客は「楽天の客」であり、ショップの客ではないのです。現在では顧客のメルアドも教えて貰えません。店は商品送ってるだけ、という感じ。
出店者が楽天から撤退する場合には、顧客情報を持ち出せないわけで、オリジナルサイトをスタートするときは一から出直しです。
以前は、ショップはまず楽天でスタートして、それからオリジナルへという流れがありましたが、それが断ち切られている現在、サブ店としての出店はあっても、最初のスタートで楽天というのはオススメしません。楽天でやるなら一生楽天ですから・・w また、今までも何回もありましたが途中で突然勝手に「料金引き上げ」とかをフツーにやってくれます。泣く泣く飲むか、一から出直すしかないので足元見られるわけです。
売り上げマージンもかなり取られるので、利益率が低い商品はペイしません。サイト制作も独特のシステムで難易度が高く、素人が作ると見た目が恐ろしいものになるので普通は外注でしょう。スタート時に数十万円くらいはかかりそうです。
ここまで書くと楽天にはいいところがなさげですが、そんなことはありません。それは集客力です。楽天の検索はご存じの通りアレですが、それでも出店するだけでミニマム1日数十人くらいのアクセスはあります。
comScoreの昨年の6月の調査データですが、楽天の月間ユニークユーザー数は5779万人。震災後でかなり増えてるときだと思いますが、参画企業数13万店で単純に割ると一店当たりの割り当ては月間444人。1日15人!! すくなっ!!
計算間違えてるのかと思って何度も電卓叩いてしまいましたがな・・。ただしこれはユニークユーザー数。同じ人が何度も訪問するので実際には数十人にはなると思われます。
アクセスをたくさん得ようとすると楽天内で広告とかいろいろ他の出費をするように勧められ、これがまたえらく高いのですが、きちんとペイしているショップもあるわけで、楽天に向いた商品(詳細は省く)を扱ってるところは儲かると思います。ただ、大多数は赤字では無いかと勝手に推測させていただきます。毎年、物凄い数の店舗が入れ替わってますので・・。要は「楽天を利用する」というスタンスで運営できるところ向けです。
【ASPのメリット、デメリット】
世の中のネットショップで数的に一番多いのがコレのはず。賃貸マンションみたいに月極めで使用料を払ってショップのシステムを使わせて貰うわけで、一見して楽天と同じに見えますが、実はけっこう違います。
10年前には私もこれを開発してまして、億単位の資本金を使って当時としては超高機能のをリリースしたのですが高機能すぎて当時のサーバでは重たすぎてコストが高くなり、大失敗しました〜 こういう経験がありますのでけっこう詳しいです。
まず価格は安いけど買い物かごだけ借りてソースで貼り付けるタイプと、サーバを借りて全体を管理画面から生成するタイプがありますが、前者はいまや旧式。SEO的にもマジで弱いので試しに使う程度なら良いですが、本格的にはオススメしません。後者はまさにピンキリ。月間数千円くらいから10万円を超える物まであります。
サイト見ると、どこのサービスも「うちが凄い」って書いてますけど、中身にはかなり差があります。素人はこの差が分かりません。コストもまちまちで、直接申し込むと月1万円なのに代理店通すと5万円なんていう凄い売り方しているところもありまして、営業マンから電話かかってきたので比較もしないで決めたっていうのは止めたほうがいいかと・・・。少なくとも数社は比較しましょう。
でも書いてあることだけでは素人には実際にはわからないんですけどね・・。勉強してください。失敗してもいいんです。別のASPに変わればいいんです。ASPごとにデータの持ち方が違うので、かなり大変なのは大変ですけど、楽天から出ることを考えれば不可能じゃありません。
メリットは
○比較的簡単に始められること
○毎月の利用コスト以外はかからないこと
○得た顧客は自分のもの
です。しかしサーバは乗り合いなので同じサーバにアクセスが多いショップが入るとめちゃくちゃ重くなることもあります。
デメリットはまず、仕様が決められているので、そのまま使わなくてはならないこと。賃貸マンションの勝手な増改築がほとんど無理というのと同じです。
そして、もうひとつ。一番考えなくてはならないのは、なにもしなければ客はほとんど来ないってことです。検索して探して貰えるような商品で、内容と価格で勝負できるなら売れますが、集客対策をなにもしてないようだとそもそも客が来ません。運営の大半は駅前でチラシを撒くがごとく、集客作業になります。駅前のショッピングビルにはいってるのが楽天だとすると、こちらは家賃が安い、駅から離れた店舗です。
なんとかして人を連れてくる作業が楽天よりも必要なわけで、SEO、広告、ソーシャル運用と、いろいろ手を尽くすことが最大の課題です。
【自社システム構築のメリット、デメリット】
集客についてはASPと同じですので、まずはここが一番大変なのはおいといて・・。
自社システムの強みは、自由度が高くてお金と手間さえかければいろいろなことができるということですね。
しかし予算によってピンキリです。Amazonの構築費用は数十億円のレベルだと聞いたことがありますが、大規模なショップを一から設計して構築すると、フツーに1000万円は超えるはずです。最近ではオープンソースのEC-CUBEをベースに開発する企業さんが多いはずですが、それでも初期コストで最低200万〜300万というところではないでしょうか。さらに維持・運用コストもかかります。金さえかければどんなものでも作れますが、大企業向けなのでこちらはおいておきます。銀座の一等地に自社ビル建てると思ってください。
これに対し、私の一押しが、WordPressのプラグイン。優れたCMS(コンテンツマネージメントシステム)であるWordPressに組み込むことで、更新も楽ちん。SEO効果も素晴らしく、さらには毎月の使用料もかからないわけですが、商品点数が数千台になるとサーバの負荷が大きくなるため、安いサーバだと厳しくなります。5000点くらいになるなら専用サーバがオススメ。構築費用はカスタマイズが必要なくてデザインなどに凝りさえしなければASPの初期コストより安いくらいです。私は開発元に依頼して永江仕様でカスタムチューンして使っています。
WordPressでの構築例
http://panproduct.com/
http://mobilefun.jp/
http://www.rod-man.jp/
しかしです。いいことばかりではありません。WordPressの場合の最大のデメリットはもともと無料のサービスだということ。つまり、無料なのでサポートがないということです。突然ショップや価格が表示されなくなったり(経験あります 号泣!!)しても、自分でなんとかしないといけない。CSSやPHPの知識がある人ならよいですが、素人さんにははっきりいって厳しいです。わたしがお金いただいて面倒見ているところは当然サポートしてますが、関係ない方から質問されても答えませんので念のため・・・たまにいるんです、こういう方・・・。
サポートが必要な方は、同様のブログのCMSにMovable Typeという商用は有料のものがあるわけですが、こちらも同様のショップのプラグインがあります。こちらは有料ですのでサポートが付いてます。価格はそれなりにしますのでそこそこの企業向けですね。
以上、簡単にネットショップの構築方法について説明しました。リアルの店舗でも同じですが、一等地に綺麗で素晴らしい導線の店舗を出しても、売ってるものがショボかったりすればすぐに潰れます。ネットの場合はさらに比較検討が簡単なので、他店と同じ物を高く売っていると誰も買いません。ということで、システムより先に「商品開発力」「マーチャンダイジング」が重要であるとはいままで何回も書いてきたとおり。
ネットにはネットで売れる商品というものがあります。それを考えないで「これを売りたい」といわれたときほどきついことはありません。