電子書籍&アプリはどうやったら売れるかを考えてみる

2010年8月23日

昨日の続きである。昨日は書いてるうちに前書きで終わってしまった。昨日の概要は「電子書籍、もしくはiPhoneアプリがくる〜」と思って作るだけ作っても、単にそれだと埋没して売れないよ、という説明だったのが長くなってしまったわけだが、電子書籍もアプリもE-コマースの1ジャンルに過ぎない、という仮説の元、どうやっていけばいいかを論じてみようと思う。しかしこの時点ではまだ自分自身でアプリや電子書籍の販売経験がない(いま作ってるが、正直一発当てようタイプではなくてロングテールを狙ってるタイプです。あ、i-modeのオフィシャルのゲームは作ったことがありました)ので、あくまでこれは仮説なんだが。あと、わたしはコレのコンサルで食ってるのであまりに立ち入ったことは書けませんが、概要をさらっと流していきます。

さて、ネット上の商店、すなわちE-コマースでは、ふたつの要素があってはじめてものが売れる。つまり「ネットショップ作ったけど全然売れません・・」という方の大半は、これが欠けてるのである。ふたつのうち、ひとつが強力であってもそこそこ売れる。でも両方無いともうダメ。実はこれはネットに限らず、リアルの商店も同じ。当たり前で簡単なことなのだが・・・

1 商品・サービス自体の優位性もしくは独自性

優位性というのは、デザインや性能が優れているというほかにも、単純に「安い」っていうこともある。アプリでいうなら無料ならかなりくだらないものでもそこそこダウンロードしてくれる。リアルの店舗ならもっと分かる。無料でラーメン振る舞えばどんなまずいものでもホームレスの長蛇の列ができるだろう。だから「無料」のものを「有料」と同一レベルで論じてはならない。お客にお金を支払わせるということは別次元の大変さなのだから。
ネットの場合、リアルの店舗よりも比較作業がめちゃめちゃ簡単なので、同じようなものであれば、価格や内容を吟味されやすい。「他では買えない」「ここだけしか売ってない」というものであれば比較対象にならないわけで、非常な優位性がある。ということは、すでに店頭で売ってる雑誌や本をそのままpdfにしたりアプリ化しても、価格が同じなら非常に売りにくい。アマゾンは2010年01月に、設定した価格が2.99~9.99ドル、電子書籍が紙媒体の書籍の最低価格(日本みたいに再販制度はないので最低価格はメチャ安くなる)より20%以上安いなどの条件を満たした場合に、作家や出版社に支払う印税を、電子書籍の表示価格の35%から70%に引き上げた。比較にならないくらいたくさん印税はらうから、電子本の価格を徹底的に安くして売りなさいということである。日本の出版社は取り次ぎとの関係で絶対無理っぽいので、作家自身がやるか、背水の陣の出版社が一発勝負かけるか、電子書籍専門の出版社が価格破壊するみたいな方向に出てこないとダメだろう。
ほりえもんの「拝金」が電子書籍が印刷物の2/3の価格設定にできたのは、著者としての力が強いからである。実際、大手出版社は作家を回って「電子出版もうちと契約して」とお願いしまくっているらしいが、巨匠レベルは拒絶しまくりらしい。そりゃそうでしょう。が、新人・中堅作家に対しては今後「うちから本を出すなら、電子化されたときもうちと契約する前提になる。いやならあなたの本は出さない」攻撃に走っていると想像するので、大家の作品が価格安め、新人のが高め、なんていう逆転現象が発生するかも・・・話が飛んだ・・
アプリでいうなら、すぐに他で真似されて同様のものを115円や無料で配布されてしまうタイプはきついだろう。そういう意味ではTwitterクライアントみたいにオープンソースで誰でも開発できるタイプはもの凄く儲けづらい。自分で考えて独自機能付けてもすぐに真似されるからだ。最初のうち超話題となって数千万稼いだというピアノアプリも、そのあと柳の下の泥鰌狙いが山盛り追随し、いま見たら「Piano」で検索してもiPhone appは1000くらい出てくる。グラフィックの負担が少なく、プログラマである程度書ける人なら自分で作れるからで、最初の閃きで稼いでもその栄光は1ヶ月くらいしか持たない。1年で10本リリースして1〜2本当てるという感覚ならいいでしょうが、本業にするのはきついよね。
結論でいうとECで売りやすく利益を上げやすい商品は、というより本業のコンサルではこの商品開発からやっているのだが、ポイントは

●ほかでは買えないもの
●独自性があるもの
●他者に対して優位性があるもの
●新規参入障壁ができるだけ高いもの、
になる。※内容は互いにかぶってますが。

アプリ開発にあたっても、これは揺るぎない。重要なのはお金を払う側の「顧客視点」である。自分がいくら面白いと思っても買う側がつまらないと思えば意味が無い。自主出版本の大半が売れないのは「自分で出したい本を出す」からで、「みんなが読みたい本を出す」のではないからだ。大切なのは顧客になって考えられる想像力であるといっても過言ではない。


2 顧客の強い導線とキラーコンテンツが必要

しかし、いくら商品がよくても売れないことのほうが実際は多い。それは何故か。客の目に止まらないからだ。砂漠の真ん中でこだわりの手打ち蕎麦店出したところで誰も来ないのと同様である。App Storeやアマゾンで売ってもらったところで同じことで、楽天の3万店に埋没しているのと同様の事象になるのは間違いない。いわんとて電子書店は本格的にアマゾンやiBook Storeで売り始めたら、どう考えてもデバイスからそのままワンクリックで買える方が簡単なわけでトータルのアクセスは望むべくもない。
「拝金」が売れてるのは書いてるのがほりえもんだからで、仮に同タイトルで同じ内容のを私が書いても全然売れなかったとは断言できる(情けない)。スクエアエニックスやユニクロやジブリだったら、しょーもないアプリ出してもそこそこ売れるだろうが、無名の小さな会社が出しても誰の目にも止まらないからだ。

そういう意味で、iPhoneが出た当初は、しょーもないアプリでもそこそこ売れたしダウンロードもされた。iBook Storeで日本語の本を売り始めた時には、駄本でもそこそこ売れると思う。しかしそれは長く続かない。ベッコアメもクレイフィッシュも1年も全盛期は続かなかった。これと同じである。競合が出てきたところで時間的優位性は簡単に終わる。

もし仮にあなたが豊富な宣伝予算を持つなら、App Storeのトップに広告出してもいいとは思うが、ネット広告はいまやリスティング広告でさえ費用対効果ではペイしないと考えた方が良い。広告でものを売るのはネット系では採算が合わないので考えから省こう。そう言う意味で楽天はなにかというと「広告を出せ」と出店者に営業するが、大半はペイしてないと断言します。

ではどのように導線を創っていくか。

1番簡単で誰もが思いつくのはTwitterやブログでセコセコと宣伝していくことだ。ほりえもんでさえ毎日必死にやっているが、しかし彼の場合はフォロワー数50万人なんである。Twitter上ではもう立派なブランドなのだ。これと一緒のことを何百人とかせいぜい何千人のフォロワー数でやってもたいした効果は望めまい。もちろんやらなくちゃいけないわけですけども。
次に出てくるのはいわゆるSEO的な向上を目指すことだ。ネットやApp Storeで検索されやすいものにしていく努力。簡単に言うけどここが非常に難しい。集客のためのキラーコンテンツもいるでしょう。ちなみによく営業電話で「当社にSEOをまかせてみませんか」という電話が来るが、大半が素人。「うちの会社に有効なキーワードはなんですか」「えっ・・もごもご」という感じで行き当たりばったりで電話しまくってるのがアリアリ。イマドキ、本当に優秀な会社ならアウトバウンドの営業電話なんかしなくったって仕事はたくさん来ますから。だいたいSEOだけで売れたりはしないんですが。しまった、また話が飛んじゃった・・・。
つまりはこうした導線を、ひとつではなくて何本も何本も用意して徹底的にやっていくことしかない。毛利元就の3本の矢の訓話みたいな感じで、王道はないのです。導線はそれぞれ独立していないので複合化され、さらにパワーを産んでいく。もちろんこれは1の商品の優位性があってのことで、商品自体がダメならいくら導線作ってもダメ。

結論になりますが、もしあなたがアプリとか電子書籍を作って、儲からなくても良いけど少しはお金にならないかなと考えるなら、作るだけに注力せず、最初から導線を取りやすいものを作るべきなのだ。ほりえもんの「拝金」は非常に彼にとって導線が取りやすかったとも言えるでしょう。

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