最初に書いておきますが、別にdisるためではなく、良くやりがちな事だと思ったので、こういう仕事をしている以上、書いたほうがいいのかなと思いまして。書き方には気をつけます。(と、わざわざ前置き)
こういう記事が回ってきました。
Macの壁紙「青い池」で美瑛町の観光客数は増加、一方で宿泊客数は減少。その原因をウェブ解析で探る
北海道の美瑛町の青い池が大人気となって訪問者は急増したのに宿泊客は減少した。その理由はどうも(お金が無くて宿泊しない)若者が押しかけてきてお金を落としていた中高年が混雑を嫌って回避するようになった、というのをanalyticsで裏付けるというものです。
自分もこういう仕事をしていますので、「もっと来訪者を増やしたい」「リアルな客数を伸ばしたい」という前提でいろいろやることが多いのですが、まずこの記事読んだときに
来訪者が増えたのに宿泊者が減るなんて異様なことはあるのか
と思いました。仮に宿泊客が減ったとしても、ちょっと結論が乱暴で結論ありきなような気がしたのです。
1 そもそも中高年はMacBookの壁紙なんて知らない
2 道が混雑しているかどうかは行ってみないとわからない
3 仮に仮説のようにそれまでの宿泊客が常連がメインなら、青い池ばかり何回も見に行くか?
ということです。昔、バブルの頃にマガジンハウスのHanakoが全盛の時代がありまして、これに飲食店が取り上げられるとどっと若い女子が押し寄せる。そうすると常連さんが入れなくなる。どっと来るブーマーは次の号が出ると全く来なくなる。常連さんはこないまま店は潰れるという「Hanako倒産」っていう話がありました。実際には潰れまくったわけじゃなくてそういう店もある程度の話なんでしょうが、尾ひれが付いた。これは同じようなことがリアルで本当に起こるのか。自分がこの件を担当するなら、まず本当に宿泊客は減ってるのかという前提を疑うところからはじめます。
仮に減っているなら、リアルに根本的に宿泊しなくなった別の理由があるのではないかと思ったわけ。天候不順とか人気宿泊施設の閉鎖とか近隣の温泉がクローズアップされたとか。それがないのであれば、青い池を見に来た人たちはどうして宿泊しないのか、若者はみんな日帰りなのか、みたいな。
これをanalyticsで解析していらっしゃるのですが、そもそも高齢者はWebで探して旅行先を決めるのは少数だと思われます。JTBみたいな大手旅行会社のサイトにいってパック旅行を検索するか、ゆこゆこみたいなカタログ通販で平日の安いツアーを探す。でもって電話で予約。ゆこゆこみたら美瑛町は1箇所だけ掲載がありました。高齢者の客が欲しいならこういうところとタイアップした方が良いです。
美瑛町の宿泊客は減っていない。むしろ増えている
たぶんこの記事を書かれた方は、観光協会の方から聞いたか、自分でなにかの資料を調べてこのグラフを作られたのだと思います。
ここで気づかないといけないのですが、この小さな町に宿泊客が250万人?!!これって京都と同じレベルです。インプレスの編集者もここくらいは気づいてくれよ。で、なんのデータなのか出典がない・・・
で、Facebookに投稿したら、東大の医療統計専門の五十嵐准教授がサクッと・・・・・北海道庁の正式なリリースを持ってきてくれました。Excel「6〜28頁」に道内自治体別の観光客数・宿泊客数・延べ宿泊客数 (2泊したら2人カウント)のデータがあります。
美瑛町の2014年の宿泊客延べ数 26万9200人
美瑛町の2016年の宿泊客延べ数 28万6400人
平成28年の前年比の宿泊客数は103.8%です!
↑のデータを見ると、宿泊率は上がっているし、長期滞在する人も増えてるんですよね。元のデータを読み間違えたか、それとも全く違うデータがほかにあるかもしれませんが、北海道庁の公的なデータが正しいとすると、記事の根底が覆ってしまうわけ。
これが観光協会の人からもらったデータだとすると、客先がちゃんとしたデータを持ってなかったり、集計方法がデタラメだったりしてすることはままあります。この場合、「データそのものがおかしいんでは」と疑うとこからはじめないといけない。特に単位が「万人」だったらその時点で「あれっ、このデータおかしくないですか」と気づかないといけなかったわけですね。
美瑛町はこうすればもっと客が来る
そもそも解析している観光協会のサイトは「青い池」で上位には出てこず、2ページ目・・・・・ほとんどの「青い池」で検索する人は観光協会のサイトには来ないのです。これも問題あると思う。というか、その前に観光協会のサイトにいったら導線と階層が・・・。
青い池の写真を押すと・・・・
また同じような画面になって青い池の説明にたどり着けない。これだけかと思ったら上に「自然景観」というリンクがあり、それを押すと
5つのスポットが出て、それを押すとやっとたどり着く・・・・・
/ja/sightseeing/shirogane-blue-pond/
↑ かなり深い階層で、トップから青い池にたどり着くまで迷いながら3回もクリックしないといけないの・・・・ほとんどたどり着けないんじゃないか、これ。スマホなら離脱するのわかりますよ。
2014年は平均5ページ閲覧していますが、2016年では平均3ページに減少。これは青い池だけを調べて、満足して離脱してしまうユーザーが増えたからではないかと考えられます。
と本文にはあるのですが、2014年のスマホ率との因果関係の記載がないが、ここ3年でスマホユーザーが爆発的に増えているのでこのサイトの作りでは1人あたりのPVが下がって当たり前ではないかと思うのです。とくにこれだけ導線が悪いと当たり前の気がする。
と、ここまではそもそも前提が違っているっぽいから突っ込んでもしかたないし、誰でもこういうことはあるので細かく書いても仕方ない。それにしてもこれだけ話題になって検索されているのに宿泊者が103%とか伸び率が低調すぎる。Facebookでは
かつては近くに住んでいたし何度も青池と美瑛の温泉に行くので実感として、宿泊したい宿がないんですよ。宿が昭和的で、しょぼい。施設が古い。昔の経営を改善しないホテルが次々に潰れて、さらに泊まれる場所がなくなっている。で、美瑛町はお金を儲けたい気があるのかね?と思うほど、お金に無頓着で、ただただ、きれいな景色ですよ、としか宣伝しない。
という根本的な問題を挙げる知り合いがおりました。
自分は今年も去年も北海道に旅行に行っているのですが、青い池を知ってここを見たいと思ったら「青い池」で検索しますよね。そうすると一番上に出てくるのは定番のじゃらんです。そして青い池のページに行くと
当然ながら下に近くの宿泊施設のリンクがあります。ここに掲載されているホテルはけっこう宿泊客が増えていると思うんですよ。
逆に観光協会にはいってる民宿とか旅館はじゃらんにほとんど出稿してないから、集客は厳しいと思うんです。検索2ページ目にやっと出てくる観光協会のサイトからではほとんど誘導は期待できないので、観光協会のサイトの青い池のコンテンツをもっと増やしてせめて1ページ目に上がるとかしないとキツいでしょう。
そんなわけでけっしてdisってるわけじゃありません。むしろ自分でもやりがちなことですので、データを見る時は多方面からいろいろ検討して、思い込みに左右されないことが大事っていうことなのでした。自分も反省します。