著者近影(遠いけど w)
週末ですが波がないので家で仕事しています。
メルマガに、サーフィンの質問が来ました。これ、結構聞かれるのでNoteで有料で書こうかと思っていたのですが、せっかくなのでブログにします。めちゃくちゃ冷水ぶっかけますがもう夏なので心臓麻痺は起こさないので平気だと思います。ww
—– 質問ここから ——
ビジネスの質問ではなく恐縮ですが永江さんにサーファーの先輩としてお伺いしたいです。
私自身、サーフィンを始めて2年ほどになります。きっかけは茅ヶ崎に住む友達でした。頻度は、夏シーズン(7~9月)に毎週末、金曜の夜に東京を出て、土曜の朝~日曜の朝にかけて茅ヶ崎周辺で行っています。ショートボードに乗っていてパドリングや波待ちの姿勢は出来るようになりました。また、波をキャッチすることもできるのですがテイクオフ以降がなかなか上達しません。
原因として「経験値不足」と「混雑している中で、他人との接触が怖い」というのが挙げられます。そのため、この夏にサーフトリップ(短期合宿)をして基礎(テイクオフや方向転換の慣れ)を身に付けたいと考えております。(そうすれば多少混んでいても安心して乗れるため)
上達に向けアドバイスをお願いいたします。
※ボードは出来ればショートに乗りたいですが上達の過程ではソフトボード・ファンボードで感覚を先に掴むのも良いかと考えております。
※身長は174cm体重52kgとマラソン体型で寒さが苦手のため夏時期のみの活動です。
※ボードは友達の家のRIP CURLのショートボードを使っていますがサーフトリップするなら現地レンタル(OR購入)も良いかと考えます。
—– 質問ここまで ——
まずわたしのサーフィンのレベルですが、日本の海では真ん中くらいのレベルで、ショップの大会で親父クラスですと決勝まで残って2位とか3位くらいに入れる程度です。日本では湘南だと偏差値55くらい(Fラン多数のため必然的に上がる)で千葉だと48くらい。オーストラリアに行くと40位 w の感じです。年食ってもできるようにパーソナルトレーナーで筋トレと週1のプールでクロール。サーフィンは年間80日くらい。トリップは年3回くらいです。
若いときに数年やっていて、40過ぎてから復活した組です。最初の五年はまともに乗れませんでした。気が狂ったようにバリにいってた時期もあります。30回くらいはいった。ハワイ、オーストラリア、パラオ、台湾、インドネシア、ニュースレドニアでサーフィンしたことがあります。それでも偏差値48ですよ。
夏だけサーフィンは絶対あり得ない
あなたがしているのはサーフィンではなく、海水浴の延長線の「サーフィンの真似」だと確信できます。
まず、ロングボードとショートボードは同じサーフィンですが、使用する筋肉や運動量が全く違います。ロングボードは毎週末一年もやっていれば他人の迷惑にならない程度になれますが、ショートボードではだいたい200ラウンドくらいしてやっと初心者脱出くらいでしょう。毎週末なら3年半。ところが夏だけだと永遠に全くできないままです。分かりやすいように女子の一流プロの写真を見てください。
ロングの女子プロ 細くて綺麗。実物と遭遇しましたがタカアシガニみたいに足が細くて長くてびびった。
ショートの女子プロ みんな逆三角形で実際に見ると背筋と胸筋にビビル。
日本人ナンバーワン カノア五十嵐 180cm 75kg
はっきりいうと
ショートボードは筋力と持久力必須!!
なのです。細マッチョもいますが、それは細いけど筋力がある人です。
たとえるならロングボードはストリートダンス、ショートボードはクラシックバレー。ロングボードはオートマのミニバン。ショートボードはレーシングカーといってもいいかもしれないです。
なんでこんなに筋力と持久力が必要なのか、データで証明します。
サイバードの「なみある」という有料の波情報アプリはAppleWatch シリーズ3に対応しています。サーフィンをフィットネスとして計測してくれるのですが、バッテリーをバカみたいに食うので2時間半しか計測できません。先日、これで計測してみました。波はそれほど大きくない時です。
2時間半のサーフィンで
心拍数はMAXx150超え。だいたい120くらいは維持し、終わったら41まで下がります。わたし、スポーツ心臓気味でなにもしないと35まで下がるので心拍数上げる薬を常用しております。ww
有酸素運動を2時間半続けるので900kcal消費しました。縄跳びを2時間連続。ランニングなら4時間ですわ。クロスカントリースキー1.5時間。強度の高いエアロビクス1.5時間・・・ww
もちろん初心者は疲れてしまってここまで動けないので消費カロリーはもっとずっと少ないですが、わたしだって偏差値48ですよ??
したがってショートボードはデブはほとんどいません。
ロングの消費カロリーはおそらく同じ時間やって200kcalくらいではないかと思います。なのでロングを20年やってもショートは乗れるようになりません。ショートをやるならショートだけしないといけないのです。ジムでカラテビクスやってもK1の試合に出られないのと同じです。
つまりなにを言いたいかというと、サーフィンが偏差値50でできるようになるには、1ラウンド1000カロリー消費に耐えるくらいの体ができないといけないわけです。高校の時に運動部やってた人ならわかりますが、だいたい週4日くらいの練習ですよね。このペースで一年くらいやると体力が付いて先輩になんとかついて行けるようになります。サーフィンも同じで週4日くらいやれば一年で体力と筋力はなんとかなります。これが200ラウンドってことです。
ところが筋トレって週3日くらいが一番効率的で、週1だとだいぶんペースが落ちます。ましてや夏だけ筋トレしても翌夏にはまた1からやり直し。永遠にできるようにはなりません。これはロングでも同じだと思います。ですがロングの方がずっと横に行くくらいは簡単です。湘南のロングの8割はナンチャッテに見えます。2割がちゃんとやってる人。
1年間、週1のペースだと上達は初心者くらいでとまり、上級者だとレベルを落とさないのがやっと。上達は難しい。週3くらいだとかなりの勢いでうまくなります。
乗れないのは混雑しているからではない
あなたは乗れない理由を「経験値不足」と「混雑している中で、他人との接触が怖い」と挙げていますが、まったく違うと思います。このまま20年やっても筋肉と体力が付かないから乗れるようになりません。逆に上級者ならどんなに混んでいてもバリバリ乗ります。
サーフィンって簡単に言うと「格闘技のバトルロイヤル」なのです。普通の格闘技は1対1ですが、サーフィンはひとつのリングに初心者からプロまで50人くらいがはいって殴り合うスポーツです。危険回避のために奥から乗る人優先というルールがあるので、パドルとテイクオフが圧倒的に早い上級者がほぼ勝ちます。
ひとつのポイントで、プロが2時間で50本乗るとすると偏差値50ではやっと15本。初心者は0〜1本とかです。リフトに乗って次々と順番で乗れるスノーボードと違い、波を争って取り合い、勝たないといけないわけですね。そういう意味では大混雑の湘南でもプロなら普通に50本くらい乗れます。つまりあなたが乗れないのは
単に偏差値が低いから
ということになります。偏差値を上げないとどこにいっても乗れません。たとえ海外の空いてるポイントに行ってもそこに偏差値70のが数人いれば1本も回ってきません。あなたに必要なのは「偏差値をあげる努力」。なので夏だけは絶対にありえず、これは本当に最低限ですが、一年中週1はミニマムで必要となります。寒いからダメというのは、痛いから格闘技できない、または疲れるからマラソンできないと同義語。そしてなにより
夏は低気圧ないのでシーズンオフ
なんです。これは世界中どこでも同じ。日本の夏は台風がないと波が無いが、冬は低気圧が通過すると波が立ちます。千葉だと一番波があるのは11〜1月じゃないかしら。湘南は冬に雪が降った翌日が狙い目です。
短期のトリップは全く上達しない
サーフトリップは楽しく、普通に旅行するのと比べてめちゃくちゃテンションが上がりますが、あなたがサーフトリップにいっても上達することはないでしょう。なぜかというと
4日じゃ筋肉つかないから
です。当たり前ですね。体ができて普通にサーフィンできるようになったらいい波のポイントで死ぬほど練習するとレベルが上がります。体がないのにトリップしても愕然とするでしょう。ただし楽しいのでどんどん行くべくだとは思います。
いまの状態は「観光地で焼き物教室体験して陶芸家になったつもり」と同じですので、適当なレンタルボードでは全く上達しないため、ちゃんとしたアドバイスをしっかりとしたショップで受けて自分にあったボードやウエットスーツを購入しないとだめ。要するにあなたのサーフィン歴はまだはじまってもいないのです。とりあえずオススメのショップはわたしがコンサルしているLUVSURFってとこです。w
湘南で上達したければ移住すること
もうひとつ。週末限定で湘南だけにいっても上達するのは非常に難しい。もちろん大混雑しているということもありますが、基本的に世界で一番波がないサーフポイントだからです。
波情報サイトは波のコンディションを○や△や▼で表現しますが、△がまあまあできるレベルです。統計がありますが、茅ヶ崎で1年間に△が付くのはたしか40日程度だったと思います。これが九十九里だと年間150〜200日です。要するに週末だけ茅ヶ崎に行くペースでは、実際に行っても波が無かったということもけっこうあるので、月に数日ということになりますよね。
地元民は波が少しでもあれば通勤前にはいってますので、時間帯や砂が付いて地形がいい場所を知り尽くせば年間100日くらいは贅沢言わなければできるわけです。なので湘南をベースにしたければ移住して、土日に波が無ければ千葉に行くという生活しかまともにサーフィンする道はありません。東京ですと、南風が吹いたら鹿島から九十九里の下、北風なら南房総。台風なら湘南、みたいな選択肢があるので、1年間通じて全く波乗りができない週末は10日くらいではないかと思います。
ただ、この生活をするためにはクルマは必須だし、年間に1.5万キロは走るからガス代や高速代も凄いし、板は15万位するけど年間に3本くらい買うしで半端ない出費となりますので、人生の大半をこれに賭けることになります。金曜の飲み会とか完全欠席です。起きるの朝の3時だもん。
それでも楽しい波乗りの魅力
なんでそんなにキツいのにサーフィンをやるのか・・・
ひとつはなかなか上達しないので、何年も何年も苦労してやっと人並みにできるようになったときの喜びが大きいのです。しかし最大の楽しさは
自然との一体感
にあります。千葉でも1年でスナメリ(小型の鯨)を何回も見ますし、たくさんの魚や虹、朝焼け、夕焼け、小型のイルカに周りを囲まれたこともあるし、亀に会ったことも何度もあります。種子島はサーフィンしてると亀だらけです。
またサーフィンは同じ波は二度と来ないから、一期一会。だから反復練習ができないわけですよ。また自然に大きく左右されるので行ってみたら波がないとか風でぐしゃぐしゃだとか、ギャンブル的要素が大きい。それだけに「当てた」という喜びがでかい。
お金と時間は非常にかかるけど、ほかの趣味を全部放棄してもそれ以上の価値がある、それがサーフィンなのですわ。
この映画出た時、女の子の初心者がけっこう海にきたけど残ったのは100人に1人くらいだと思う。それくらいハードなものなのです。ちなみに女優さんたちはサーフィン全くできません。CGって凄いわ。