本日は珍しく真面目な本業系の話。
数日前からネットで回っていた岡山市のプロモーション。結局はこういう形になった。
「桃太郎市に改名」は序章 岡山市のPR事業 朝日新聞デジタル
PR事業名は「岡山『えーとこ・ぜんぶ』届けよう!」。市の知名度や市民の郷土意識を高めようと、今度は「伝説の岡山市」をキャッチフレーズに、探偵に扮した甲本さんが市の魅力を解き明かす動画を掲載する。一部の動画の音楽には、甲本さんの兄、甲本ヒロトさんらのバンド「ザ・ハイロウズ」の「日曜日よりの使者」を使う。
PR事業費は約1900万円。市の担当者は「桃太郎市は多くのメディアで紹介され、すでに相当の効果はあったと思う」と話した。
Web上でも「なにも有名なものがない岡山市が頑張ってやって成功した」という声が高い。特にWEB系の仕事に携わっている人たちからは「よくやった」という意見が多いようだ。
確かにこれはネットでの集客という1点では成功したと思う。プレサイトには250万アクセスあったと誰かが言っていた。しかし、プロモーションという事では成功かもしれないが、マーケティングという点から自分は市長に「惜しい」のひと言を差し上げたいと思います。別にdisっているわけではないので、詳細を説明してみたい。
岡山市になにも目玉が無いということは、このサイトの下の方にスクロールしていくと分かる。
これから順次、サイトを更新していくそうなのだが、内容が・・・
現在公開したのは以下・・
世界中で今、桃太郎が生まれている
岡山市は大都会である
岡山市は(自称)日本一暮らしやすい街である
裸祭りの服男に福は訪れる
ここで「?」なのだが、岡山市はなにをコンバージョン(最終目的)としたいのだろう。てっきり市の財政を上向かせるための観光客誘致だと思ったが、この中でまともに観光客に響くのは「裸祭り」くらいで、あとは関係無い。大都会に至っては、移住者募集かとおもうくらいだ。「岡山市の認知度を上げる」ということに主眼が置かれている気がする。まるで企業のブランディングのようなのだが、いったいこの市はお金が余ってるのかなと思って財政状況見てみた。
http://www.city.okayama.jp/contents/000126181.pdf
なんと・・
【収支は5年間で163億円の不足】
・平成23年度の決算見込み等を元に今後5年間(平成24~28年度)の市の財政の見通しを試算。
・試算にあたっては、大規模事業等の重点化、進度調整等をしないで集計し、また、財源調整のための基金を取り崩さないとして試算しています。
・これによる今後5年間の収支不足は、163億円になると見込まれます。
平成22年度末は56億円の黒字だったのだが、今後はめちゃくちゃ財政的に厳しいではないか・・・。どう見てもPRに投資するなら「知名度アップ」ではなくて「財政向上」になる観光客誘致に絞るべきではないか。だいいち「岡山市」くらい誰でも知ってるから知名度はすでに100%ですよ。
で、今後の予定を見ると、
伝説のスイーツ 2/8
伝説の乗り物 2/15
伝説の3文字 2/22
伝説の道 3/1
伝説のキジ 3/8
伝説の食べ物 3/15
伝説のあの人 3/22
と、次々と公開されていくようなのだが、この中でも観光客誘致になるのはスイーツと乗り物くらい。それにしても弱い。賭けてもいいけど昨日数百万くらいはあったアクセスは、日を追うごとに落ちていって最後は1日数百人くらいになってしまう気がする。数ヶ月たったらみんな忘れてますよ。
「岡山市は頑張った」という評価は横に置いておいて、これはちょうど、
「売るべきオリジナリティ高い目玉商品が無いのにプロモーションに1600万かけたネットショップと同じ」と同じように感じる。素人はアクセスさえあれば売れると思うが、そんな甘いもんじゃないんです。商品が×なら売れません。
「うどん県に改名プロモーション」の香川県は、「うどん」という強力なオリジナル商品があった。サイトで言うならオリジナルコンテンツである。この強力な商品の上に素晴らしいプロモーションが乗ってきて、かなり効果が出たと思う。しかし、そもそも売り物がないのにプロモーションして集客してどうするのか。自分がいいたいのはここです。
「そんな売り物なんて一朝一夕でできるもんじゃない」
当たり前です。宇都宮の餃子だって、富士宮の焼きそばだってすぐにできたわけじゃない。官民一体で頑張って創り上げたものです。ネットでサイト作ってプロモーションするのは金さえ払えばできるが、こちらはそんな簡単にはいかない。しかしB級グルメだけが観光客誘致の全てじゃない。たとえば鳥取県には「隼」という駅があり、ここがスズキのバイクの「ハヤブサ」の聖地となってイベントには多くのハヤブサ乗りが集まるようになった。なにが当たるかもっと視野を広く持つべきなのだ。岡山市だって市中を隅々まで検分すれば似たようなのはあるかもしれないし。
※鳥取県と言えば10億円投じた国際漫画博が壮絶な結果となって(こちらまとめ記事)、隼駅のイベントも萎えるくらいの現実を突きつけられたと思うわけですが、昔と違っていまの人は、官製でピントが外れて作られたものにはなかなか動きません。
そろそろ結論ですが、わたしが一番言いたいのは、1900万円の予算をかけるのであれば、まずは集客する前に「オリジナリティあるキラーコンテンツ」を岡山市に作るべきだったということです。いままで作れなかったのなら、このサイトを作る気合いでネットで「岡山に名物を作ろう」くらいのプロモーションからやるべきだったんではないか。「名物が無い岡山市」くらいのネットのプロモーションを仕掛け、名物を創り上げてその知名度を上げ、集客につなげる。つまり「マーチャンダイジング系」のプロモーションこそ一番必要だったのではないかと考えて、今日のブログをたたみたいと思います。
でも実際にやるとすると、外部の広告代理店や制作会社に丸投げでは絶対できない。ここが地方自治体の一番の泣き所かも・・
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http://www.ehoken.co.jp/
このあとKindleやKoboでも出る予定です。